失礼な人
ヒロインとは今のところ私はクラスメイトとして上手く付き合えていると思う。
(にしても、彼女本当にどうなのかしら………)
私は彼女の馴れ馴れしい所が少し嫌だと感じた。私は別にそういうマナーがどうとかは気にしない方だと思っているが、彼女のそれは少し度が過ぎるのではないかと思う。
「ねえねえ、エリザベス!貴女はどう思う?」
考えていると彼女が話しかけてきた。それに適当に答えを返して私は再び考える。
(確かに学園初等科の校訓は“身分差関係なく平等に”だけど……。
節度を持った付き合いをする、ある程度は敬意を示すというのが暗黙の了解である。)
友達でもないお方に軽口を叩くことは良い顔をしない方々の方が多いだろう。
友達になりたいときは、自分からお願いしてそして相手が了承して初めて友人となる、手紙で素直な思いをぶつけるなどの複数の方法があるらしい。
(それに、ヤヌス子爵令嬢の時も思ったんだけど私舐められてない?)
ヤヌス子爵令嬢はマリアを勝手に後ろ楯にしていたから私にも大きな顔ができたのかもしれない。だが、彼女は違う………彼女は何の後ろ楯もないただの子爵令嬢である。
「フェルナンド様と知りあいなんでしょ?エリザベスって……どんな方なの?」
おや、どうやら彼女は私からフェルナンド様の情報を引き出そうとしているようだ。
「さあ?そこまで親しい訳ではありませんから……」
ここでフェルナンド様の情報を与えるのは良くないのかもしれないと思い、私ははぐらかした。
けど間違ってはいない、私はフェルナンド様という人を理解しているとはいえないから。
「そうなんだ……ありがとう。」
これだから使えないモブは、そう言う彼女の小声が聞こえてきた。
仮にも私王女よ、失礼すぎない?
「それにしてもどうしてフェルナンド様のことを?」
「いや、彼の事がす、す、いや、なんでもない!特に意味はないよ。」
す、好きなんですね…………けど婚約者いるわよ、彼。
そして、その後私がマリアと共に中等科のお兄様の所へ行こうとしているとそのお兄様がこちらに走ってきていた。
「お兄様、どうしたのですか?」
「エリザベス、あのお前のクラスに来たメイデン子爵令嬢………あの女ヤバイぞ!」
「アルベルト様、一体どういうことなのですか?」
マリアと私も驚いている、お兄様には彼女が怪しいことは一切言っていなかったからだ。
「いや、それがな俺がさっきたまたま剣術の時間の時に忘れ物して取りに教室行ったら……彼女がフェルナンドの机にこれ入れてるの見たんだよ」
中等科が剣術の時間といえば、私たちは掃除の時間だったような………
「これは、手紙ですか………」
お兄様が持っていたのは可愛らしい今流行している便箋であった。
「いや、中身見てからかってやろうと思って開けたら………」
見てみると、あの特別監査室で見たようなフェルナンド様のことをどれ程愛しているのかということが何枚にもわたって書かれている手紙であった。
というかお兄様も勝手に手紙を見るのは良くないと思うわ。
「エリの言った通り彼女が犯人だったの………疑ってごめんなさい」
「これ、フェルナンドに言った方が良いよな?」
「ええ、そうでしょうねお兄様。」
これは言った方が良いと思う。これでフェルナンド様も彼女に近づかないだろう。
(けど、フェルナンド様が近づかない……つまり彼女の思い通りにいかないことで彼女が何をするのかも注意する必要があるわね)
エリザベスは密かにこう思った。




