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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科3年生
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男達の青春~in特別監査室~

ある夜、仕事も一段落してようやく帰ろうという空気の流れた特別監査室内では学生時代の話で盛り上がっていた。

何故そのような話になったかというと、昼間にエリザベスがメイル先生について愚痴りに来たことである。


「いたよな、そういう教師。」


ヘンリーのこの言葉から始まり、話はいつの間にかどんな学生にだったかにという話は移っていた。


「アベル、お前どうだったんだ?」


「私?別に普通の学生でしたよ、勉強もまぁ上の下くらいだったかと。」


「へぇ、意外です。室長って学生時代から常にトップを取り続けてるイメージだったんで」


「ジューン、そういう貴方はどうでした?」


「ああ、別にたいしたこともなくボーッとして過ごしてましたよ。あまりにもボーッとしていたので“学園の眠り姫”なんてあだ名もつけられてしまって、別に私は寝ていたわけではなかったんですけど。」


「………そうですか。あだ名、私はそういうのありませんでしたね。」


などという風な会話がとりとめもなく続いていた。


「おい、パレス!お前はどうだったんだよ」


ヘンリーは気だるそうに帰ろうとしていたパレスに声を掛ける。


「えぇ、私ぃ!私は落ちこぼれ寸前のダメな生徒だったと思いますよ?

と、とにかく私は帰りますからね!皆さんも早く帰ってください。」


パレスはそのままものすごい勢いで出ていってしまった。


「っおい!……ったく、しょうがねぇ。またこの4人か、まぁそれでションちゃんはどうだったんだ?学生時代。」


「あの、私もそろそろ帰りたいんですが………。」


「質問に答えてからにしろ!俺は気になるのよションちゃんの学生時代が。俺の学生時代もちゃんと教えてやるから、いいだろ?」


「いや、私はそんなにおもしろい学生生活を送っていたわけでは無いですよ?病弱でしたから友達もたくさんいたわけでは無いし対しておもしろい事も無かったように思いますよ」


「……ションちゃん、貴方本当のことを言いなさい!私は聞きましたよ、貴方が中等科の頃机に山積みになったバレンタインチョコレートが有ったという噂を!」


もう話は終わったと帰る支度をしていたショーンにアベルは突っかかる。

そういえば、アベルはショーンの1つ上の学年であり、そういう噂も入ってきていたのだろう。


「おいおい、なにしれっと帰ろうとしてるんだ。本当のことを言え!」


「そうですよ、チョコレートなんて私、妻以外からもらったことないのに!」


「ええ!?いや、確かにチョコレートは貰うことがありましたけど……そんな山積みになるほどではなかったと思いますよ。せいぜい5個くらいだったかと……」


ヘンリーやジューンは掴みかからんという勢いであり、ショーンは困惑した。

ショーンからしてみれば、そのチョコレートをくれた女子たちは皆婚約者ある身だったのでおそらく本命では無かったのではないかと思っているし、お返しが面倒だった思い出しかないのでバレンタインはそんなに好きなイベントという訳ではなかった。


「………とにかく私も帰りますよ。」


なにやら騒いでいる3人を置いてショーンは特別監査室から出た。


その後、


「ちくしょう!ションちゃんめ、俺の学生時代聞かずに帰っていきやがった。」


「ヘンリー、貴方の学生時代も聞かせてくださいよ。」


このままでは、すねて面倒だと感じたアベルは取り敢えず話を聞くことにした。


「………俺はこう見えて当時は“学園1のおんな泣かせ”って言われてたんだぜ!

同級生に今の王様、当時の王太子が居たんだけど女は皆アイツじゃなくて俺のとこに群がってきてたんだぞ、すげぇだろ!」


「確かに………ヘンリーって今でも充分男前ですからね、その当時はずいぶんと凄かったんでしょうね。」


「スゴイ!いいなぁ皆さん……私も1度でいいから妻以外からキャーキャー言われてみたいものです。」


話はショーンの事からヘンリーの昔の武勇伝のようなものに変わった。

そして、話を聞き続けていたアベルが唐突に切り出した。


「あの、ヘンリー……1つ聞いてもいいかな?私が高等科時代に聞いた話なんですけど、その王太子様と熾烈な女の取り合いをした人がいるって聞いたんですけど……もしかしてそれって貴方の事じゃないですよね?」


「それ私も聞いたことありますよ?なんかその女性を巡って決闘したとかなんとかっていう話を。」


「うん?ああ、それはデマだよ。だいたいこの国はたとえ王であろうと側室禁止だろ、それに俺は彼女に興味なかったもん」


「誰なんですか?その女性」


2人はワクワクしながらヘンリーの答えを待っている。


「………マルマントン伯爵夫人、当時のカサンドラ伯爵令嬢だよ。」


「ええ!あの社交界の3華の1人の……」


「ああ、そうだよ。それにしてもなんでそんな話になってんだ?

元々、あの王様が一方的に恋心を抱いてたんだよ。俺はそれを今のマルマントン伯爵に相談されて、仕方なくアイツに諦めさせようとしてたってだけの話だよ!

う~ん、それが俺らが彼女を巡って争ってるように見えたのか?よく分からんが決闘はしていない。」


「………決闘してないんですかぁ、それにしても噂って怖いですね………」


「スゴイ裏話を聞きました……それにしてもなんでマルマントン夫人に興味なかったんですか?カサンドラ伯爵家って代々美人が生まれる家系ですよね?ほら、エリザベス王女の先輩にあたる姪のアンリエッタ=カサンドラ伯爵令嬢も美人な方だとか」


「………綺麗すぎる華には近寄るなってやつだよ。

じゃあ、解散ってことで!じゃあな」


ヘンリーはいつの間に準備をしていたのやら、さっさと出ていってしまった。

残されたアベルとジューンは


「いや!もっと教えてくださいよぉ」


と慌ててヘンリーを追いかけていった。



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