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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科3年生
35/229

つまらない、ああつまらない、つまらない

私は今危機的な状況に置かれている。

それは、算数のテストで90点以上取ることが出来なければ“特別監査室への出入り禁止”と言う私にとっては大問題なことである。


「それはまだいいのよ、それは。」


勉強に身が入らなかった私に責任があることだし少し厳しいようにも感じるがそれはしょうがないと納得している。

問題は、家庭教師だ。


(この人の授業超ツマンナイ!)


そう、つまらないのだ。

お母様が付けてくれた家庭教師、メイル先生はとてもじゃないが私に向いていない………いや、この授業で点数取れる子がいるの?って思わずにはいられないレベルである。


(もっと工夫した授業の仕方はないの?)


ただ教科書を読み、じゃあこの問いを解いてください。分かりやすい覚え方や教え方は何もない。

こんなのじゃとれる点数もとれない。もしかしてお母様、わざとこんなクソ教師付けたんですか?


「やってられるかぁ!!!!こんなんじゃ点数もクソもねぇだろ!お前の授業なんてクソ以外の何者でもねぇ!」


沸々と怒りが沸いてきた。押し込めようとしたイラつきが私を突き動かして私は部屋から飛び出した。


(特別監査室の出入り禁止なんていう一大事にこんなのじゃ本当に私、出入り禁止になっちゃう!)


私は走った、あのヤヌス子爵令嬢との件の時と同じくらいの速さで走った。


暫く王宮内を駆けずり回っているとお兄様の姿を発見した。お兄様は馬車に乗り込みどこかに行こうとしている様子であった。


「え、エリザベス……?どうしたんだよ、目がマジで怖いって」


「お兄様、乗せてください!あの教師から私を救ってください!」


お兄様が私の迫力に怯んでいるうちに私は馬車に無理矢理乗り込んだ。

お兄様は馬車を走らせるように言い、馬車はがたごとと進んでいく。後を振り返るとあのメイル先生は派手にずっこけていた。


「そういえば、これどこに行くんですか?」


「フェルナンドの所だ………。なあエリザベス、あのさっきのって母上がお前に付けたメイル女史だよな?」


「ええ、そうですわ。ですがお兄様、ひとつ訂正をあの方は先生などではありませんわ!ただの朗読家の間違いですわ。」


「そ、そうかい。」


馬車の中で私は考えていた。

フェルナンド様に私の家庭教師をお願いしようかしら?フェルナンド様はあのメイル先生よりかは断然ましだし教え方も上手そうだと感じたからである。

テストは明日の放課後に迫っていたので私は藁にもすがる思いだった。


そして、ライオンハート邸にて。


「あ、アルベルトにエリザベス王女…。」


「いきなりすみませんがフェルナンド様!私の家庭教師になってくれませんか!あのクソ、いいえメイル先生じゃ90点なんてとても無理です!」


「おい、エリザベス!お前今クソって言ったよな、おい。」


「そんなこと言われても困ります……」


「フェルナンド様、そこをなんとか…困るんです。90点以上取らなければ、特別監査室出入り禁止なんです何卒お願いします!…」


とにかく私は必死だった。その時の私は“特別監査室出入り禁止”と言うこの言葉で頭がいっぱいだった。

私は“特別監査室出入り禁止”がいかに私に悪影響を及ぼすのか、メイル先生の授業じゃ絶対に無理なことを必死で訴えた。


「はぁ、ええっと分かりました。そこまで深刻なのでしたら私が臨時の家庭教師になりましょう」


「フェルナンド…その方がいいよ、うん。」


兄は後に語る。

あの時のお前絶対にフェルナンドが断ってたら殺してただろ、あの目で人殺せそうだったと。


そして、数時間後夜になり私達は帰ることとなった。


「フェルナンド様!絶対に貴方の方がいいわ、これなら90点以上とれるわ!」


「そうですか?ありがとうございます、王女。」


意外にもフェルナンドの教え方は私にも合っていた、あのメイル先生と比べるのも失礼な位であった。

はにかみながらフェルナンド様は嬉しそうにしていた。

こうして見てみるとアベルに似ているのね、そんなことを呑気に考えていた。


「確かにフェルナンドは教えるのが上手いな。教師なんて向いているんじゃないか?」


「よせよ、アルベルト。僕は父さんのように文官の道に進むんだ、教師なんて……」


「立派な夢ですのね……

でもそのためには学園に通う必要があると思います、不登校はよくありませんわ!経験者は語ると言うやつですよ。たった2週間ですが私も勉強が大変でした。」


「だって、外に出たら誰かに見張られているような感じがするんだもん!無理です」


「………フェルナンド、これに関してはエリザベスに賛成だ。勉強で遅れをとったらお前の目指す道は遠くなるんだぞ!それでもいいなら俺は無理に行けとは言わんがな」


何か覚悟を決めた後、フェルナンドは


「よし決めた!明日から行く、ああそういえば再テスト明日ですよね。頑張ってください!」


フェルナンド様からのエールを背中に受け、お兄様と共に私は馬車に乗り込んだ。

そして帰ってきた直後お母様に、王宮を走り回るなんてはしたないことはしてはいけませんと怒られたのだった。


あれ………?私がメイル先生にキレた件ではなくそこなんですか?

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