やっと会えたね!
あれから私たちは3人で手分けしてフェルナンド様を探すのだが見つからない。
「お兄様、フェルナンド様は先に帰ったのでは?」
「そうかなぁ?」
「確かに………アルベルト様、私達が探し始めて1時間ほど経ちましたわ。」
「もう、あいつは………明日会ったら絶対に許さん!」
「帰りましょう、マリア。」
「ええ。」
こうして私達はフェルナンド様を見つけられないまま帰ることとなった。
「ふぅマリッサ、今日は監査室に寄るわ。」
「分かりました」
「おい、エリザベス!俺も寄るよ」
「どうしてお兄様が?」
本当にどうしてだろうか?
そして、特別監査室で
「アッ!フェルナンド…お前、やっぱりここに!」
お兄様は着いて開口一番にこう言った。
「ん?あの方がフェルナンド様なのですか?」
そこにいたのは、アベルによく似た茶髪の若い地味な男性だった。父親のアベルと違い華はないが利発そうな方だった。
「ああ、そうだよ!フェルナンドお前俺らがどれだけ探したと思ってるんだ!」
「いや、あの、僕……」
そのままお兄様はフェルナンド様とケンカを始めてしまった。
「あの、これは何の騒ぎですか?エリザベスさん」
ピョコンと奥の部屋から出てきたのは、私の会いたかった人だった。
「あ、ションちゃん!私達ずっとフェルナンド様を探していたの。お兄様は置いてきぼりにされたのを怒ってるのよ。」
「そうなんですか………いや、何でもフェルナンド君は誰かに付けられてる気がするってここに来たんです」
「へぇー、ストーカーかしら。怖いわね……ションちゃんも気を付けた方が良いわよ」
「ストーカー?私には無縁の事ですよ」
………貴方のような無自覚な色男が1番被害に遭いそうなのですが!
「そんなことは無いわ!だってこの特別監査室って色男の宝庫だもん、絶対に狙われるわ」
「はぁ、そうでしょうか………ヘンリーやアベルやジューンなら分かりますが、私はそんなに色男だとは」
「なんということ!ションちゃん、貴方はもっと自信を持つべきよ。というか1番貴方が被害に遭いそうよ!」
「はぁ?そうでしょうかね。」
「絶対にそうよ………ションちゃん、そのまま動かないで。」
「え?」
私はションちゃんの胸元のボタンを2つほどを外す、それはまさに……まさに天国再びといった光景であった。
「な、な、なにするんですか!」
「………やっぱりダメよ。貴方、もっと自覚を持った方が良いわよ」
そう言いながら私は静かにボタンをまた掛けなおす。
赤面した顔がまた色っぽく感じたのは私の脳内に仕舞っておこう。
「エリザベス、なにやってるんだ………お前。」
「王女、そんなハレンチなことしちゃダメです。」
いつの間にかケンカを終えていたお兄様とフェルナンド様に冷たい目で見られた。
「別に、それよりもフェルナンド様はストーカーの被害に遭われているそうですね」
「おい、誤魔化せてないぞ!
それは置いておいて、まぁそうだよ。こいつはストーカー被害に遭っているそうだ」
「そうなんですよ」
数日前、誰かに見られてるような視線を感じた。初めは気のせいと思っていたが、そのうち誰かに付けられているようになって怖くなって逃げてきたそうだ。
「う~ん、フェルナンド様は心当たりはないんですか?」
「それが……全く無くて困ってるんですよ」
「それは大変ですね、何かあったときはいつでもここに駆け込んでください。必ず誰かはここにいるはずなんで」
「ありがとう!オンリバーン侯爵……」
そんなとき、
「おーい、なんか変な手紙届いてるぞ~!誰かからのラブレターかなぁ?このヘンリー様が見ちゃうぞぉ!」
ヘンリーの間抜けな声が響き渡る。タイミング悪すぎでしょ。
「ヘンリー、誰宛なのそれ。勝手に見ちゃダメよ、その誰かに渡さなきゃ!」
「いや、それが宛先書いてねぇんだよ」
「不気味ね……絶対にラブレターではないでしょ。特別監査室をよく思ってない人のイタズラよ」
ヘンリーはだよなと言いながらその手紙を開けると、
「う、うわぁ………。なんだこれ」
真っ青な顔をして手紙を放り出した。
「どうしたんですか、ヘンリー。」
ションちゃんや私達もその手紙を見てみると…………
《フェルナンド様、好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです》
「気持ち悪!こんなことに紙を無駄遣いするなんて、好きは1回でいいのよ!」
「エリザベスさん、問題はそこではありませんよ。」
「そうだぞ、エリザベス……。おい、フェルナンドお前本当に心当たりないのか?」
「あるわけないだろう!」
「おい、フェル坊。お前も大変だな……ん?これは、」
手紙はまだ続きが合った、そこには
《やっと会えたね!》
そう書いてあった。
「怖い怖い、なんだよこれ。フェルナンド!お前、本当にヤバいぞ多分。気をつけろ」
「あ、あぁ、うん。」
フェルナンド様は放心していた。
お兄様はそんなフェルナンド様を引っ張って家まで送っていった。
「アベルには私から言っておきましょう。」
「頼んだよ、ションちゃん。私も帰るよ」
「エリザベスさん、ではまた」
そう言ってションちゃんに監査室の中へと入っていった。
私も夕陽を見ながら馬車に揺られていった。




