婚約者の秘密
二人きりとか気まずい、何を話そうかと考えを巡らせていると彼の方から話を切り出した。
「言いにくいんだけど、あのオンリバーン侯爵だったっけ?彼はやめといた方がいいよ……」
彼は何故そんなことを言うのだろうか、と思うよりも先に私は
(なんか、イチヤ王子のキャラ変わってない?こんなため口だったっけ?)
こう思った。
なんというか、言葉で表現するのが難しいが雰囲気自体も変わったように思える。“人形のように生気を感じられない”から“神秘的なお方”といえば良いのだろうか?
感情が宿ったという表現が正しいのかもしれない。前とは違い親しみやすい雰囲気になっている。
「あ、えっと僕はね君のささやかな恋を邪魔するつもりはないんだよ?だけれども彼は良くないオーラが漂っている」
オーラ?まるでよく当たると評判な占い師のような事を言う。
まさか、イチヤ王子は漫画でよくある“魔力持ち”のようなものだろうかそれともただのあてずっぽうなのだろうか?
「オーラとは一体……」
「……隠してもいつかはバレることだし言っておくけど、僕は人が発しているオーラのようなモノが見えるんだ」
「つまり、超能力のようなものでしょうか……」
そんなものだと彼は言った。
「彼には、とてもいいオーラが漂っている。けど、なんなのだろう?この王宮内はオーラがごく僅かだが濁っている、このままだと何十年先になるかは分からないがきっとこの国を蝕むだろう。」
よく分からない、一体どう言うことなのだろう?
「どうなるのかは私にもまだ分からない。私の力は何かが起こるのは分かるが、何が起こるのかは分からない。」
「じゃあ、私はどうすればいいのですか?」
「それも僕には分からない、だけど彼にはいいオーラが漂っている反面陰のようなモノも感じる。」
ションちゃんには何か暗い過去があるということなのだろうか?
「分からないよ、僕にはオーラが見えるだけだから。
王女、君が彼のことが好きなら彼を婚姻の時に国に連れていけばいいじゃないか。
さっきも言ったが別に僕は君の恋を邪魔するつもりはないんだよ」
「はぁ?でもイチヤ王子は……」
イチヤ王子の言い方はまるで彼と不倫をしろと進めているような物言いだ。
「別にナクガア王国は公妾制度があるから、王の子であれば側室の子でも継げる。だから問題はない。」
「……私は、彼と友人以上になるつもりはありません。それに私は貴方の婚約者です」
「ふぅん、けど人ってどうなるのかは分からないものだよ。周りは僕の力を知ったとたん“悪魔の子”と罵ったものだから、すんなりと受け入れてくれた人は君が初めてだ。」
「イチヤ王子……」
イチヤ王子はどこか儚い笑顔を見せ、微笑むだけだった。




