ある夜
あの事件から2週間ほどたったある休日の夜に自室で私は考え事をしていた。
この間の“ヤヌス子爵横領事件”の際は偶然会えたのだが、8歳を迎えた私はまた彼とは会えない日々に戻った。今は、マリアという友人もいるのでそれほど寂しくはない。
「マリッサ、マリッサはいる?」
「はい、ここに」
私は、この美人で優秀な侍女を疑っている。
まるで私の行動を理解しているかのように彼に会えなかった。それは、彼女が誰かに情報を流したか私が特別監査室を訪ねることをあらかじめ向こうに教えておいたからではないかとそう思えたからだ。
「貴女、私がオンリバーン侯爵と会えないようにするために何かしていないかしら?」
「それは……」
この反応は怪しい、
「イチヤ王子との婚約の件かしら?それとも何か他にあるの?」
私は、そんなにも貞操観念の薄い女だと思われているの?
いくら彼に恋をしているとはいえ私はこの想いを伝える気はない、これまで通り友人としていることができたらそれで満足である。それに伝えたところで彼が私と結婚してくれるわけではないしイチヤ王子との婚約が無くなるわけではない。
「いいえ、私にはなんのことか……」
「本当の事を教えてよ!どうしてオンリバーン侯爵に会えないのよ……」
「…………」
幼い王女の悲痛な顔は夜だからかわからないが陰があり暗くみえる。
「王女様、私は___」
「マリッサ、もうこれ以上は良いのです。貴女はよくやってくれましたよ。エリザベス、貴女が知りがっていることを私が話します!」
そこにいたのは王妃だった。




