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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
その後、残された者達は………
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内務大臣の罰

内務大臣ユーロ=バードミルという大物貴族はこの606年2月辺りを境に権力を握りながらも存在感を消していく事となる、それはどうしてだったのか?そして、彼自身が存在を消したのは革命前後と言われているのだが、彼の死には不明点が多い。

__これは、2つを手に入れようとして失敗した男が死んだ後から革命に向かうまでに王国で一体何があったのか?その影の話。


レミゼ600余年の繁栄の象徴である王宮の某執務室内、そこに男が2人いる。頬がこけてやつれた様子で葉巻を燻らせるヘンリー=ベアドブークと何かを恐れるユーロ=バードミルの姿があった。


「ヘンリー、私に何をさせようとしているんだ……。」


「何を怯えている、ユーロ=バードミルよ。俺はただ、ローザンヌ公爵に力添えしてやれと言っただけだ。この通り頼む、ローザンヌ公爵に力添えを頼む。」


ユーロ=バードミルは今、目の前の男に得たいの知れない恐怖を抱いている。この男は昔から腹の底が見えない男であったが今日はこれまで以上に見えない。こういう時に大概何か裏があり、奴をじっと観察していると何となくだが、その裏の意図が透けて見える気がしていたが、今回はそれが一切無い。

言葉だけで見れば、こちらが物事を頼まれていて向こうは頼む側というこちらが優位な立場に見える。だが、それならば自分が今感じているこの感じは何なのだろう?この自分がはいと答えることを強制されているようなこの感じは。


「ローザンヌ公爵に何をさせるつもりだ?……まさか貴方は、ローザンヌ公爵を利用して仇討ちをしようだなんて事はありませんよね。」


「ふん、俺は仇討ちなんてしない。

俺はここに存在し続けると決めた、逃げるのはもう止めにしたんだ。それにアベルの事ならもう覆しようもないし、本人も納得している。それを止めようとも思わん。」


「じゃあ、オンリバーン侯爵の為です?貴方が彼の為にこそこそと怪しい動きをしていたのは知っています、結局彼は死んでしまいましたが。」


「そんな事して何になる、そんな事した所でショーちゃんはもう居ない。もう居ないんだよ!

それに、仇討ち?俺はそんな正義ぶる事だけはしたくない、そんな事したら奴らと同類に堕ちてしまいそうで嫌だからね。」


眉間に皺を寄せて、煙を吐きながらヘンリーは答える。“奴ら”とはきっと私が用意した“正義王の裁判”という名のステージで踊らされて勝利の美酒に酔いしれた連中の事である。


「では、先程の質問に戻るわけだがローザンヌ公爵に何をさせるつもりですか?」


「別に?俺は何もしない、俺は(・・)な。俺はな考えたんだ、血を流さずに王の首だけをすげ替える方法は無いかと。ショーちゃんならきっと誰もが傷つかない平和な解決を求める、だが俺はそこまで人間が出来ている訳ではない。」


……意図が読めてきた、この男は『私に無血革命を影で起こすように仕組め』そう言っているのだ。そして、それに自分が嫌悪する“無知な連中”を利用してやれとそう言っているのだ。


「確かにそうみたいですね、そんな物騒な考えをこんな所で述べるのは貴方くらいだ。人間が出来ていたらそんな事をこんな所で言わない。」


「散々困らされてきたお前が1番俺の考えを理解するなんて皮肉なもんだ。」


これを意訳すれば『早く答えろ』という事だろう、私に残された答えはハイかyesだけだが。

ローザンヌ公爵を担ぎ上げて、無知な連中を利用して王の首だけをすげ替える無血革命を起こすというハイレベルな芸当をしろという拒否権の無い無理難題に応えなければならない。


「でも、なんでローザンヌ公爵なんですか?」


「王なんて能力さえあれば誰だって務められる、血筋なんてクソくらえだ。だいたい今の王家だって数代前に王家の血をほとんど引かない傍系の王族に好運にも(・・・・)王位が巡ってきたじゃねぇか、公式には無いことになってる公然の秘密だけどな。」


「なるほど、先例があるからそうしろと。ローザンヌ公爵家が分家の中で1番新しい家だからですか、また正義に酔いしれさせて……。

これが貴方の復讐ですか?王家を滅ぼす事が貴方の望みですか?」


「俺は存在し続けて俺という存在をある限り奴らが何も知らずに人を破滅させたという罪は消えない、たとえそれがアイツと奴らの利害が一致してあの正義王の裁判という茶番が行われたとしてもだ。俺はくたばらずに生き続けて、奴らがまた正義という美酒に酔いしれるのを嘲笑ってやるだけだ。俺はただ何もしないでそれを見ているだけだ。」


彼の眼は狂気に満ちていた、まるで現実を見ていない。彼の中だけは605年9月21日から時が止まっているかのように彼の眼は自分を映してはいなかった。

彼は本当に何もせずに自分の考えを述べるだけで実行するのは私だろう、案を出したりそれをバックアップはするが直接的に手は下さない。それが彼なりの復讐なのだろう、これは私が彼の考えや言葉を深読みし過ぎているだけかもしれないがあながち間違ってもいない気がする。


「貴方という人は……」


「それ以上は言うな。」


彼はそう言って葉巻を燻らせるのみだった。

まずは、革命云々の前に以前駆除し損ねた害虫を一匹駆除しなければ、その蛆虫の名はマイク=ワンスと言う。彼と私が手を取り合ったのは元はと言えば、かの蛆虫を駆除するという理由も含まれていたと思う。


______


『まあ、ここら辺で良いかな?この後は知っての通り革命は実行された。20年近い時間をかけて、その時ヘンリーはもうこの世の者ではないんだけれど、彼の望み通りに彼は一切手を汚すことなくユーロ=バードミルを操って無血革命を成功させた。

ゲーム内で語られていないだけで頭お花畑女とその女しか見えてない馬鹿男に国が治められる訳無いだろ?これは本来あった道筋だ、ヘンリーがローザンヌ公爵を担ぎ上げなかろうとも別の誰かが立ち上がっていたから気にしなくても良い。』


『……結局ヘンリーは復讐心からそうしたのか国の為にそうしたのかどちらなのでしょう。』


周りが居なくなって自分だけが過去に囚われて生きる事がどれ程辛いことなのかショーンには経験がないので分からない、1人で生き続ける事それはとても悲しい。


『んー、どっちもじゃない?彼の気持ちになってみれば複雑だし。仲間の仇討ちと仲間を滅ぼした国を優先だなんてね、どっちもしたいよ。彼にとっちゃ故郷な訳だし、まあ故郷=愛着のある所とは限らないけどね。彼は土地は憎んでいないけどそこに住む人が憎いってケースじゃない?それが屈折して“王国リニューアル革命大作戦”って形で出たんじゃないかと僕は思うけど、僕らだって人の心を完全に読める訳じゃないからそれは本人のみしか知らない。

あ、僕はそろそろ帰るからミラーナ君、後はよろしく。』


無関心な様子のオティアスは自分の管理する世界に帰っていった。


『次は、アベルとこの国の別れだな。

ん?革命編が見たい?それは僕じゃなくて作者に言ってくれた方がありがたいけど作者は文才もないしギブアップって言ってる、諦めてくれ。』


『誰に言っているんですか、そこには誰もいないですよ。ミラーナさん?革命なんて見なくても私は良いですよ。』


『そうだな、では次……606年3月辺りか。アベルが国を追われたのは。

はぁ……もう番外編するのも疲れてきた、あっさりと終わらせる筈の番外編がどんどん長くなってるし一体どうなってるんだ!』


ミラーナはぶつくさと腕輪で下界の時を先に進めていた。親父はまだ帰ってこない、何処で何をしているんだろう?






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