逃走中
私達はとにかく逃げた。逃げて解決することではないと思っていたが、とにかく逃げた。
そして、私が1年にわたるボッチ生活で発見した隠れ場所にて一旦休憩することにした。
「マリア様、どうしてあんなにカサンドラ伯爵令嬢は怒っていたのですか?」
まず知りたいのはそこであった。調和の神エデュ神に例えられる彼女が怒るとは何をしたのか……
「ああ、それですか………」
曰く、ヤヌス子爵令嬢の兄が持っていた爆竹を3年生から6年生の教室の窓__初等科は1階が1、2年で2階は3、4年生と2学年ごとに階が上がっていく仕組みで、この場合つまり2階と3階にセッティングして爆発させた。それを十日間やったらしい。その他にもいろいろとあるのだがそれについては省いておく。
(G〇Oかよ!)
「私は、この先どうすれば良いのでしょうか……貴女にも迷惑をかけてしまったし」
「あの!私は迷惑とは思っていませんよ」
「では、私と友達になってくれませんか!」
まさかマリア様から言われるとは思ってもいなかった、私が常日頃からどう切り出そうかと思っていたことを。
「はい、いいです。これからは私のことはエリザベスと呼んでください。貴女のことはマリアと呼びます。」
「分かりました、エリザベス。」
ようやく安堵の雰囲気に包まれていたのにそれをぶち壊す人物がいた、ヤヌス子爵令嬢だ。
「やっと見つけたわよ!」
その執念は褒めておきたいが、彼女はどうしてここまでマリアに、私にこだわるのだろうか。
「逃げよう!マリア、」
「ええ、分かっています」
また、私達は敵前逃亡するという騎士であったならば絶対にしてはいけない不名誉なことをした。もちろん、私達は騎士ではないのでこの事は不名誉なこととはならないが、私達はどうしても逃げなければいけなかった。
(彼女の眼マジだもん!)
殺してやる、私に恥をかかせたお前達を!
彼女の眼からは、おぞましい恨み辛みを感じて私達は生命の危機を感じるほどだ!
「どうして追いかけてくるの~!」
「知りませんよ…」
今、もしここで徒競走の世界大会が行われていたら間違いなく金メダルを取れそうなくらい私達は全速力で走った。
一時間ほど経っただろうか?学園中を駆けずり回り、もう私達の体力は限界であった。いつも王宮内を行くあてもなく走り回っている私とは違い、マリアは体育の授業以外走ったことすら無いようなのでとっくの昔に限界が来ていた。
「もう逃げられないわよ~!」
悪役とはこのような人を言うのではないか、彼女の顔は捕食者のようだった。
覚悟を決めたその時、
「何をしているんですか!」
聞き覚えのある、愛しい声がした。




