嫌われた?
私は、初等科2年生となった。
驚いたことに、私はなんとあのマリア=ローザンヌ公爵令嬢と隣の席になった。
そして、イチヤ王子との結婚は10年後、つまり私が17歳の時にすると正式に決まった。
「10年か………」
10年、口に出してみる。
大人になると時間の経過は早く感じるらしい。そのような感覚を持ち合わせていない子供の私から見ても決して長くはないと感じた。
「そんなに暗い顔をなさって……そんなにもイチヤ王子が好きなのね」
ローザンヌ公爵令嬢が呆れたように言う。
あの恋愛小説をくれたときから思っていたことなのだが彼女は案外悪い人間ではないのかもしれない。
「いや、まぁそんな感じです。」
その問いに私は適当にごまかす。
本当はショーン=オンリバーン侯爵、通称ションちゃんのことで悩んでいる。彼とは後10年しか一緒にいられない、もしかするともっと短いかもしれない。
(最近会えてないなぁ、忙しいのかな?)
私はなにも彼と恋人になりたいわけではない。もしも私が婚約者などおらず、身分的に釣り合う貴族令嬢ならば彼にこの想いを伝えていただろう。“王族”として生まれてしまった以上、それは叶わない願いだと言うのはちゃんと分かっているから……。
ある春の休日、私はやはり特別監査室に顔を出した。
それにしても、休日に遊びに行くところがこの特別監査室しか無いことは問題だった。
(そろそろ友達をつくるべきね……)
以前のエリザベスの影響かはたまた私が人付き合いが苦手なせいかは分からないが1年の頃から友達は未だにいない。……つまりはボッチである。
「ベス、お前ここ以外に行くとこないのか?」
ヘンリーにそう聞かれるくらい、私はここに暇さえあれば来ていた。
「……無い、あったらそっちに行ってるわよ。それにしてもどうしてこんなに来ているのにションちゃんに会えないのかしら?」
「ああ、あいつはいろいろ忙しいの!俺は外交官が優秀すぎて出番が無いだけ」
それにしては、極端に会えない……まるで私が避けられているみたい。
(もしかして……私、嫌われた!?)
げんなりとしながら私は自室に戻った。




