どんな人?
私の気分は沈む一方であった。
この国を襲う何か、婚約内定の件、そして何よりもションちゃんが自分の領地に帰ってしまったことだ。その寂しさを紛らわせるために特別監査室に行く回数も自然と多くなっていった。
「そんなに落ち込むなって、あいつは昔から領地経営が趣味みたいなもんだから!それに1ヶ月経ったら帰ってくるじゃねえか」
「そうですよ、オンリバーン侯爵領はとても広いので管理もそのぶん大変なんですよ。たった1ヶ月の我慢ですよ!」
アベルやヘンリーはそう言って私を励ましてくれるが、私の心は晴れない。
「やっぱり寂しいよ。でもそこがションちゃんの良いところだもん。」
貴族のほとんどが領地経営を代理人に任せているなか、彼は数少ない自ら管理を行っている貴族の一人だった。
「そうですよね。たしかに、私にはあそこまでは出来ませんよ。室長になってからは忙しさが増したので余計に領地管理ができていませんから……」
「アベルはまだやってる方だよ、俺とか他のやつら見てみろよ。もう何年も領地に行ってすらないんだから。」
「時間が空いたときに戻れば良いんじゃないの?ションちゃんと違ってベアドブーク領はそんな遠い所にある訳じゃないし、」
オンリバーン侯爵領は一番西方にあり、道中に高い山がいくつもあるため片道1日かかる。
「そう言うわけにもいかねえの。社交シーズンはあるし、オフシーズンも宮廷儀式やらなんやらでなかなか行く暇ないんだよ」
そういうものなのか、やっぱり貴族は大変なんだなぁ。
「エリザベス王女、意外と大変なんですよぅ。貴族も」
突然話に割って入ったのは、パレス=コノユライン子爵だった。彼の得意分野は軍事で何故か所々語尾を伸ばすクセがあるのが特徴的な男である。
「どうしたの?パレスくん」
「あ、室長。宰相閣下がお呼びですぅ」
ドタバタと慌ただしくアベルは外へ出ていった。
「……あ!そうだ。ヘンリー、貴方外交が専門よね?ナクガア王国のイチヤ王子って知ってる?」
「え、知ってるよ?あー、確か内定したんだったよな婚約。」
「どんな人なの?」
ヘンリーは、それを聞かないでくれと言った顔をしていた。
「………容姿端麗、将来有望だよ、けどねなんというか運がなさそうな顔してるんだよ。見ればわかるから」
それ以上は教えてくれなかった。一体どんな人なの?全然人物像が見えてこない




