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ああ、私はただのモブ。  作者: かりんとう
初等科1年生
12/229

婚約内定

この国に何かが起こるかもしれない。

だけど、この先一体何があるのかは分からない。それがどうしようもなく恐ろしく、不安に感じられた。


「王女様、お目覚めですか……」


「はっ!いつのまにか寝ていたのね」


「………丸1日眠っていたのですよ!心配したんですから。外で馬車を待たせています」


「ちゃんと睡眠は取ってください…エリザベスさん」


心配そうにこちらを覗き込む彼は、いつものようなビシッとしたスーツに着替え直していた。


寝ぼけ眼をこすり、布団からモゾモゾと出てまだふらつく体で外に出る。

馬車に乗り込み、外へと優しく微笑む。


自室に戻ると、王妃が待ち構えていた。


「エリザベス、座りなさい。」


そう言う顔はとても険しいものだった。やはり丸1日眠ってしまったことが原因だろうか。


「えっと、心配かけてすいません。」


「………その事については後でゆっくりと言わせてもらいます。貴方に重大な知らせがあります。」


「え?」


一体何?


「実は、貴方とナクガア王国のイチヤ王子との婚約が内定しました。新年には正式にイチヤ王子と顔合わせをして婚約してもらいます。」


え………イチヤ王子って誰?ナクガア王国……北の方にある雪国じゃなかったかしら。


「どのようなお方なのですか?その…イチヤ王子って」


母曰く、イチヤ王子は15歳で私よりも8歳歳上の容姿端麗、王太子筆頭候補として名高く賢く、武術にも優れているお方らしい。


(そんな完璧な人間本当にいるのかな…あ、けどションちゃんは有能な上に色男だしもしかしたらいるのかも)


そうは思ったが、たとえそのイチヤ王子が容姿端麗なお方でもあの特別監査室で見たあの無自覚な色気に勝てはしないと思う。


「何ですか!その緩みきった顔は。婚約が決まったわけではありません!」


一体どのような手段を使ったのかは分からないが恐らくなんとか内定までこぎ着けたのだろう。

周辺国の王子たちはもうほとんど婚約しており、私と釣り合うお方はいない。私の選択肢はものすごく歳上の王様に嫁ぐか国内の貴族だが、すでに王様も貴族子弟も結婚しており満席状態であった。

恋愛結婚が大半を占める日本の感覚が抜けない私は政略結婚という言葉も存在もどうにも慣れない感覚だった


「私は、結婚したくありません!」


「王家に生まれた以上、そのようなワガママは許されません!たとえ誰か婚約者以外の人に好意を持ったとしてもその気持ちを捨てて、自分を押し殺して国のために尽くさなければならない義務を背負っているのです!」


私は、結婚なんてしたくない。結婚が恐ろしいものだとは分かっているから、だけど結婚するのなら私はションちゃんのような優しい人と、私のことを受け入れてくれる人と結婚したい!


「……分かっています。それは分かっています、ですが」


「………あなた、まさか!」


母はなにかを察したようだった。


「ねえ、エリザベス。もしも私の考えが正しいのならその考えは捨てた方がいい。それは持ってはいけない想いよ、王女として、女として。」


優しく言う母の言葉にはどこか重みがあった。


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