まさかのゲーム関係者
「室長のアベル=ライオンハートです。よろしくエリザベス様」
え…………?
アベル=ライオンハート、その名前は聞き覚えがある。
以前、ここは前世にやっていた乙女ゲームだと言った。そして、物語開始よりも約50年ほど前の世界であることも……
『瞳を閉じて、恋の学園』確かそんな名前のゲームだっただろうか。攻略対象は5人、そのうちのひとりがこのアベル=ライオンハートの孫なのだ。
「えっと、アベルさん……何歳ですか?」
やっとのことで絞り出したのはこのセリフだった。
「えっと40歳だよ?ついこの間誕生日を迎えたので……エリザベス王女、大丈夫ですか?顔が真っ青だよ…」
「具合悪そうだけど大丈夫か、ベス…」
「少し、ここで休んでください。」
そう言ってションちゃんは仮眠室に案内してくれた。
誰もいなくなったところでもう一度思考をゲームのことへ戻す。
あのゲームは人気が有りすぎて漫画化、アニメ化などいろいろされた。確か漫画の番外編だったと思うがそれに、あのアベルの孫ルイ=L=ドレリアンの過去の話がある。アベルもその過去編に登場するのだ。
「なんなんだろう、違和感を感じる。あの温和そうなアベルが……」
漫画では、とても気性の荒いすぐに孫に八つ当たりする人物だった。
違和感も気にはなるのだが、ここで分かったことがある。アベルは40歳といった、その過去編でアベルは75歳の人生に幕を閉じた。その10年後に物語が始まる。つまり、物語開始は45年後ということになる。
「何があるの……この先」
アベルは数十年後、遠く離れた西のマルチウス帝国へ亡命している。つまりはこの国に居られない事情が出来た、それと関係あるのかは分からないけれど性格も変わった。
「何かよくないことが起きるのかしら……」
しばらく考えたが、どうしてそのようなことになるのかは思い当たらない。ですが、私はこの時この世界に来てはじめて恐怖心を抱いたのです




