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物語の始まり
『共感覚』
ある刺激に対して、異なる種類の感覚をも生じさせる特殊な知覚現象
激しく雨が降る中、俺はいつもの道を歩いて高校へと向かっていた。
雨の日はいい、傘で人の顔が隠れるから。
俺には共感覚がある。
人を見ると色も見えるのだ、まるでオーラのように。
「大輔〜」
振り返れば白色に包まれた友人の悠一がこちらに向かってきている。
色は人の性格で変わる、俺は長年の経験でそれを知った。
赤は攻撃的な奴の色、黄は明るい奴の色、黒は・・・、まぁ色でそいつを知ることができる。
そして白は善人の色、悠一はいい奴だ。
悠一が追いつくのを待つため止まったその時、曇天から何かが落ちてきた。
その何かは黒色に染まっている、黒、そう黒だ。
黒色は理を外れた色だ。それが良い方だろうが悪い方だろうが理から外れれば黒色に染まる。
その黒色の何かはこっちに向かって落ちてきていた。
悠一が笑顔で近づいてきている。
「来るな!」
悠一が驚いて止まったその瞬間、世界は黒色に染まった。
物語が始まる。