94.俺、世界樹を目指す
正直に言おう。
俺、占いは信じてない。
血液型占いだと4種類、星座占いだと12種類。
日本国内限定としても、その日の運勢が、二つ掛け合わせても48通りなわけないじゃん。
だがしかし、毎日チェックはしてた。
理由?
彼女がラッキーカラーにうるさかったからだよ。
毎日俺の分までチェックしてて、身に着けるか持ってるかしないと世界の終わりみたいに騒ぐんだ。
そのこだわり方は、緑のバスケ少年並みだったな…。
というわけで、俺はダフネの紹介でエルフの占い師のところに来ている。
うん。予想通り、ドワーフに占い師はいなかったよ…。
当たると評判の占い師の名前はクリスチーナ。着ぐるみはビーバー。使用アイテムはタロットだ。
クリスチーナは慣れた手つきでカードをシャッフルし、俺の前に広げた。
「ダール様、探し物を思い浮かべながら、カードを三枚選んでください」
ふむ。
六的な雑誌だと、カード一枚で各月(または星座)生まれの人の、ひと月の運勢を占ってたな。
さすがに探し物だとそうはいかないようだ。
それはそうと、確かタロットは22枚というか、22種。
雑誌の占いは12の月それぞれに違うカードが出てたから、ダブったら引き直してたのかな?
じゃなかったら、1月から順にカードを引いて戻さないとか?
どっちにしても、12月の人は運勢の幅が少なくてカワイソス?
いかんな。俺、占いに相当偏見を持ってるな。
こちらがお願いしてるんだから、当たると信じてちゃんとしよう
俺は身体の一部を手のようにして、カードを三枚裏返す。
隠者の正位置、塔の正位置、星の逆位置だった。
あ、逆位置ってのは、俺から見て上下が逆ってことね。
カードを見たクリスチーナが口を開く。
「ダール様がお探しの物は、ここから北へまっすぐ進んだところにあります」
「ほう、すごいな。それで、距離はどのぐらいだ?」
「申し訳ございません、そこまでは。ただ、とても背が高い木の根元にありますので、すぐにわかると思います」
「ありがとう、十分だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
あくる日、俺はエルフの集落から北へ向かった。
SDGは最大戦速。具体的にはマッハ3ぐらいだ。
その気になればもっと速く飛べるけど、探知が疎かになっちゃうからね。
これぐらいがちょうどいい。
全速で飛んで鳥にぶつかりでもしたら、大惨事だよ。
などと言ってるうちに森林地帯を抜けて、今は砂漠の上だ。
ふむ。結構広そうだな。
オアシスもあって、側にテント村みたいなものもある。
砂嵐はどこにも見えない。バベルの塔はなさそうだな。あ、異世界だから、あるはずないか…。
砂漠を抜けてしばらくすると、針葉樹の森があった。この世界も、北の方が寒い模様。
そして前方に「世界樹かよ!」って言いたいぐらいの木が見えた。
遠くにあるから鉛筆ぐらいの太さに見えてる。それでも先端が雲に隠れてるのがわかる。
どれだけ高いんだよ!!
まあ、死者を蘇生できる葉っぱを取りに登るわけじゃない。
デカい方が目印としてありがたいぐらいだ。
あたりに危険もないようだし、少しスピードを上げるか…。




