80.俺、芸人の血が騒ぐ
いやいや、ちょっと待ってくださいよ。
頑張るのはいいんですけど、その前に、このG細胞を回収してほしいんですけど?
『七つ集めてください。そうすれば、どんな願いでも叶いますよ』
おうふ。
G細胞を回収してもらうためにはG細胞を集めろと…?
目的と手段が完全にごっちゃなんですがそれは…。
ていうか、七つ集めたら龍神でも出てくるんですかね?
だったらレーダーが欲しいです…。
『レーダーはあげられませんが、代わりにこれを』
俺の頭の上に、100万ワットに輝きそうなカプセルが乗っていた。
カプセルには、赤いボタンと青いボタンが付いてる。
赤いボタンの方は「押すなよ、絶対に押すなよ」と言わんばかりに点滅中。
芸人の血を引く俺(大ウソ)としては、押すしかないでしょ。
そーれ、ポチっとな。
「!?」
G細胞は風船がしぼむように縮み、カプセルに吸い込まれた。
ふむふむ、G細胞はコレに入れておけってことですね。
カプセルに小さな変化があった。
青いボタンが少しだけ明るくなってる。
おそらくだが、青いボタンを押すと、収納されたG細胞が出てきて大きくなるんだろう。
色的に納得できるお約束だ。
で、一つ確認なんですけど、カプセルの中でG細胞が合体したりしませんよね?
頭が七つある赤い竜なんかになられたら、俺の手に負えないと思いますよ?
……。
…主様からの返事はない。
あとは自力で何とかしろってことですね。
とは言え、G細胞なんかどうやって探せばいいんだ?
ひょっとして、カプセルの光りそうな部分がレーダーになってるとか?
俺はカプセルを水平に持って、ゆっくり360度回ってみる。
……。
…。
何の反応もない。
うん、知ってた。
主様はそこまで甘くない。
でも、完全にノーヒントで放り出すほど無慈悲じゃない。
根拠は無いけどそう思う。
だったら、ヒントは何処にある?
…。
そうだな。
まずは地脈の確認だな。
やらなくてOKって言われたから、まだ見てないもんな。
俺は地中に探知を使い、地脈を視た。
あー、なるほど。
こーゆーことですか…。
本来はまっすぐ流れてたはずのエネルギーが、地上のクレーター――G細胞があった場所――を迂回するように曲がってる。
そして、G細胞があった場所には、闇属性のエネルギーが流れてきてる。
これが地脈を乱してるわけだ。
てことは、闇属性の流れをたどれば、次のG細胞が見つかる可能性大だな。
☆
ことの顛末を伝えるため、俺はライオン○たちのところに戻った。
結局地脈の件は解決してないから、正直、気が重いな。
「おお、勇者殿、ご無事でしたか」
「ああ。問題の岩と、そこに巣くってたやつは片付けた。ただ、地脈の乱れ自体は元に戻せなかった」
「なんと! それでは、拙者たちの考えは間違って…」
「いや、そうじゃない。他の場所にも地脈を乱すものがあって、それを何とかしないとダメって話なんだ」
「左様でござったか…。いや、力を奪われることがなくなっただけでも、拙者たちにはありがたいでござるよ」
「そう言ってもらえると、俺の方もありがたいな」
何か変わったことがあったら念話をくれるよう頼み、俺は現地を後にした。




