77.俺、GなSHOCKを受ける
悪食を使い続けること二時間弱、ようやく変化が訪れた。
ダークネスムーン・クリスタルらしきモノからジワジワと出ていたマナが、ピタッと出なくなったんだ。
で、ダークネスムーン・クリスタルらしきモノは、形を変えずに残ってる。
そうだな、カップうどんのお揚げの味が無くなった状態とでもいえば、イメージは伝わるかな? 硬さは全然違うけど。
ヒャッハー! 奇跡体験だぜ!
俺の悪食に耐えたってことは、下っ端じゃない神が関わったモノってことなんだ。
悪食を一行で説明すると、触れたモノをマナに分解して取り込む能力だ。
この世界の全てのモノは、マナに分解できる。
形があるモノはもちろん、熱や運動のエネルギーでもね。
だから、なんでも食べられるわけ。
推測だけど、暴食も同じ能力だと思う。違いは過程や条件ってとこだろう。
そんな能力で分解できないモノは、RPGでいう「だいじなもの」しかない。
そう。手放すとゲームが進まなくなっちゃうから、製作者が特別扱いしてるアイテムだ。
それをこの世界に当てはめると、神が特別扱いしてるアイテムってことになるわけ。
つまりは神様の都合だ。
ただ、下っ端の神の都合は、上役の神の都合で無かったことにされる。
階級社会の宿命だね。
俺はアキラ様から天下御免のお墨付きをもらってる身だ。
そんな俺が「だいじなもの」に悪食を使ったらどうなるか?
アキラ様と同格以上の存在が決めた「だいじなもの」なら、俺の悪食は無効になる。
そうじゃない場合は、それ相応の神にお伺いを立て、判断を仰ぐ必要がある。
ジワジワとマナが出てた二時間弱は、その判断待ちだったんだろう。
というわけなので、残ってるのがどんな物なのかは是非とも見ておかなきゃ、なんですよ。
もしかしたら、超強力な剣とかが作れる謎素材かもしれないし。
あ、クリスタル系だったら剣は無理か…? いや待て、FFなRPGの一部じゃ剣もあった気が…。
悪食を解除すると、黒い鉱石があった。
そう、元鉱山だった観光地の土産物にあるようなアレ。
大きさはリンゴぐらい。重さは三個ぶんぐらいかな?
ふむ。これがダークネスムーン・クリスタルか…。
名前からしてカットされた宝石みたいなものだと思ってたんだけどな…。
この鉱石、いろんな意味で俺の予想を外してた。
まず、朱い点滅を繰り返してる。
サイクルは心臓の鼓動っぽい。
光ったときは、バーニングな怪獣王(別称デ○ゴジ)っぽい感じだ。
で、驚くべきことに、生命反応が…。
まさか、吉良悪な鉱物生命体?
それとも何かの卵とかですかね…?
『それはG細胞よ』
「!?」
主様の声が聞こえた。
それはいいんだけど、内容がとんでもない。
G細胞って、昨日聞いたばかりの、俺指定特別天然危険物で取り扱い厳重注意品じゃないですか!
そりゃ、「だいじなもの」扱いされるわけだよ…。