8.俺、オリジナル魔法に成功する
黒いマネキンが魔法を使う。
両手を浣腸の形にして俺に向け、親指を倒した。
うん。真っ先に思い付いたのがそれなんだ。すまない。
「暗黒弾」
拳大の漆黒の弾丸が俺に迫る(棒)
…いや、ショボくね?
これ、黒スライム2匹分の威力だよね?
超巨大熊の火球の1/5ぐらいなんですけど?
どう見ても脳筋なモンスターの魔法以下の合体魔法って…。
いや待て。何か、特殊な効果があるのかもしれない。
じゃあ、一応躱すか?
うーん、どうせなら、跳ね返したほうが良くね?
じゃ、そーゆーことで。
「ハンズ・アワー!」
オリジナル魔法が成功した。ネタが古いのは勘弁ね。
俺の前に光る両手が現れた。俺よりでかいのはお約束――じゃなくて、全身をカバーするんだから当然だな。
右手が暗黒弾を受け止め、左手が合わさる。
空中に数字が浮かび、カウントダウンが始まる。
『3、2、1、ゼロ』
両手が開く。
それぞれの手に暗黒弾が乗っている。大きさは元の倍だ。
うん、とってもわかりやすい。
右手、左手の順で、暗黒弾を投げ返す。
4倍ぐらいの速さで投げ返された暗黒弾は、黒いマネキンを消し去った。
……。
…いや、黒スライム、マジで弱すぎだろ。
跳ね返してわかった。
暗黒弾は、闇っぽい属性を持った、ただの魔力弾。
威力は俺が感じたとおりで特殊な効果は一切無し。
で、サイズと数と速さを倍にして返した暗黒弾で、数えたら22体いた黒いマネキンが全滅…。
ギミックは悪くなかった。でも、実力は…。
言っちゃ悪いけど、見掛け倒しの雑魚そのものじゃん。
「う、嘘でしょ!?」
あ、金メッキが思いっきり動揺してる。
タコの頭も気持ち青くなったような…。
「エエエエエエエイユ様、どどどどどどうしましょう?」
うわっ! これ以上ないぐらい動揺してるよ。
これ、金メッキもタコも雑魚で確定だな…。
「あああ慌てるでない。おおお前の全力を出し尽くせば、きききっと勝てる」
…もう何も言うまい。生暖かい目で見ていよう。
タコは茹でたみたいに丸まった。
「分裂盾」
つるつるだった足に吸盤…じゃないな、プチプチ(正しくは気泡緩衝材)みたいな突起ができ、そこから同じ色のスライムがポコポコ出てくる。
…何がしたいんだろう?
「どうだ! 見たか! オクトスライムの切り札よ! どんな魔法もこれで防げるんだから!」
…この世界のスライム、やっぱり雑魚でした。俺が黒スライム(が合体した黒いマネキン)を全滅させたこと、もう忘れてるようです…。