74.俺、2199なU星爆弾を真似てみる
アラクレの胸の部分から漆黒のレーザーが何本もほとばしる!
その中心に、拳大の何かが見えてきた…。
それは禍々しいオーラを放つ、漆黒の宝石。
実体化したそれは、吸い込まれるようにアラクネと同化した。
アラクレが危ない口調でごちる。
「クックックッ……ダークネスムーン・クリスタル」
むむむむむ。
おそらくだが、やつは幻の闇水晶を隠し持ってた。
それが俺の攻撃を受け、パワーアップしたようだ。
そして、名前も変化した模様。
しかも、幻の銀な水晶と同じパターンなんですけど?
下半身がクモのおニイさんがクリスタルパワーでメイクアップなんてしたら…。
ブルブル、考えたくない!!
コズミックパワーになる前に片付けよう(謎)
問題は、ダークネスムーン・クリスタルだな。
アラクレ本体と同じで闇属性。斬撃吸収能力あり。
それが一体化してるから、本体だけを攻撃する手段がない。
刀剣の類を持てない俺に、マジもんの斬撃は無理です。
人間に変身しろって? 武器はどうするんだって話ですよ。
SDG用に創った魔法金属でも、全力攻撃に耐えられるかは怪しいんですけど?
そもそも、敵の目の前で剣を作ってる余裕がどこにある?
ついでに、俺、栄光紋なんて持ってないからね。鍛冶には向かないんだよ(謎)
といっても、普通の魔法じゃ糸と岩を突破できない。
地形が変わるぐらいに威力を上げても、おそらく本体は無傷だろう。
通じる可能性は低いけど、物理攻撃を試してみるか。
俺は魔法のイメージを描き、空に特殊な魔力弾を撃つ。
目標は宇宙空間。小惑星帯だ。
ここからじゃ見えないけど、魔力弾は反射されたように方向を変えながら、手ごろな岩塊(比重が大きくて硬度が高いやつ)を撃ち出してるはず。
…おっ、うまくいったようだな。
俺は岩塊を誘導。自分の魔力が乗ってるから、距離は関係ない。
照準を微調整。ターゲットはアラクレだ。
岩塊の速度を限界まで上げてから、魔力を消去する。
これで純粋な物理攻撃――質量攻撃でもある――の出来上がりだ。
「メテオスナイプ」
不可避の隕石がアラクレを直撃!
……したんだけど、糸の防御で無力化された。
運動エネルギーを吸収し、クモの巣に逃がす。そして本体に還元する。
勢いを失った隕石は、スライサーで薄切りされる野菜のように消えていく…。
予想通り、物理攻撃もダメだな、こりゃ。
「クックックッ。見たか、暴食の力を!」
暴食…。小説なんかだと七大罪の一つとして超有名な能力だ。
多くの場合、その名の通り、ほぼ全ての物を食べることができちゃう。
生き物だろうが、武器だろうが、魔法だろうが、エネルギーだろうがお構いなし。
超強力なのは言うまでもない。
その代わり、所持者は極少数。たいていは一人なんだよね。
そんな力を持ってるなんて…、どこぞの世界のクモの魔王かよ…!