68.俺、マッカは持ってないんだが…
住処に分身を残し、俺はSDGで飛び立った。
ムラセイは、森や林がキリンの模様のように散らばってるイメージだ。
木がないところは草地だったり川だったり固まった溶岩だったりする。
そのせいで、一面が森林のヒノキソとは植生も動物の分布も違うんだ。
…近くに火山がないのに溶岩があるのは謎だな。
さて、やってきましたムラセイの外れ。
ケンタウロスは何処かなーーー?
SDGに乗ったままで広域を探知する。
反応はすぐに返ってきた。
ほうほう、これはなかなか…。
ケンタウロスは、思ってたより強かった。
そうだな、地上戦なら今のハーピーと互角に戦えるレベル。
二人いれば、アカドウを倒せると思う。
ただ、数は少ない。
引っかかったのは20人ちょいってところだ。
それと、群れてると思ってたから、ほとんどが単騎だったのは意外だな。
とりあえず、一番強いやつのところへ行ってみよう。
おおっ!
一番強いケンタウロスは、腰から下がペガサスじゃん!
うわー、かっけー!
早速あいさつしてこよう。
俺は威嚇系の能力を全てオフにし、SDGをゆっくり降下させた。
ん!?
人間の部分が、ライオン…?
じゃあ、ライネルか?
いや、アルビノじゃないけど白いな…。
それに、深紅の帷子っぽい衣装を着てる…。
まさか、ライオン○…!? じゃあ、ペガサスはヒカリ○…?
前を見据えたままだったライオン○(仮称)は、俺が正面まで降りたところで口を開いた。
「ほう、アカドウを倒した勇者殿が、わざわざこんなところまで。拙者に何か御用かな?」
「なんだ、俺のことを知ってるのか。いや、この近くに用があったから、ついでにケンタウロスも見ておこうと思ってね」
ライオン○は俺が降りてくることも、そして俺の正体も知ってた模様。
思ってた以上にデキるね。
ここは上手く交渉して仲魔になってもらおう。
「ふむ、それは地脈に関わることかな?」
「ああ、正解だ。このあたりに乱れてるところがあるって聞いて、調べに来た。手伝ってくれると嬉しいんだが?」
「手伝う? 拙者が? 勇者殿を?」
「俺はこのあたりに詳しくないからな。ケンタウロスで一番強いお前の力を貸してほしい」
「何を言われる。拙者より強い者などいくらでもいただろうに」
「いやー、上からざっと見た感じじゃ、お前が頭一つ抜きんでたけどな」
その瞬間、ライオン○が険しい顔に変わった。
「バカな…、拙者と互角の者が一人いたはず」
「わかった。探してみるよ。特徴はあるか?」
「そやつはちと異形でな、虎の背に人の上半身が乗っておる」
…それ、某ミケーネの大公じゃないですかね…?
まあいい、探してみよう。
探知をちうごくの超高解像度カメラも真っ青な超々高解像度モードに切り替えて…。