63.俺、情報を整理する
ワオの件は片付いた。
気分的には悪・即・斬だ。
いや、個人的には聞きたいことがあったんだよ。
以前にいた世界のこととか、転生してすぐのこととか、ついでに俺の知らないこの世界のこととか。
個人的にじゃなく、ヒノキソを庇護する立場として聞きたいこともあった。
そう、フクザってやつのことだ。
ワオの名付け親だから、当然、あいつが消えたことはわかってる。
だから、報復に来る可能性があるわけ。
ただ、あくまでも可能性であって、来ると決まってるわけじゃない。
アカドウの名付け親もエイユの名付け親も、今のとこ来てないからね。
それに、ワオにそのへんを聞き出すのはメッチャ苦労すると思ったというのもある。
情報を聞き出す基本は、相手の信頼を得ること。
コレ、あいつになら話してもOKと思われなきゃ、まともな情報は得られない。
そのために必要なのは、まず対話を重ねることだ。
そこで時間がかかることは確実だ。
俺、交渉の専門家じゃないからね。
それに、そこまでやって聞きだした情報が正しいかを確かめる手段が無い。
と言うわけで、下手に会話して平静じゃなくなる前に消し飛ばしました。
以上、自己正当化終了。
まあ、フクザってやつが来たら来たで、なんとかなるでしょ。
ハーピーたちがいるし、エルフやドワーフも戦力になる。俺も進化で強くなってる。
そう思ってなきゃ、やってられませんって。
それよりも、だ。
ワオは転生者に違いない。
転移してきて虎になった可能性もあるけど、どっちでもいい。
大事なのは、俺以外にも他の世界を知ってるやつがいたことだ。
一歩進めて考えると、他にも転生者がいるかもしれないんだよ。
ただ、だからどうした? だからどうする? っていわれると、俺は今まで通りでいるしかない。
だって、転生者を探す手段がないからね。
ワオが転生者だってわかったのは、短いけど会話したからだ。
この先会う人全部に同じことはできませんって。
次に、転生者を見つけたとしても、そいつを特別扱いはできない。
敵対する立場で現れて改心する様子が無ければ、そのまま敵として扱うしかない。ワオみたいにね。
中立や友好的な立場で現れた場合は、大義名分が必要になる。能力を示すとか、知識で利をもたらすとかね。
そうしないと、集団の規律が保てなくなっちゃう。
俺の威光でまとまってる今なら大丈夫だと思うけど、先のことを考えると今からそうする必要があると思うんだ。
でも、やることはある。
それは、みんなに注意を促すことだ。
初めて接触する集団の中には、明らかに場違いな能力や道具を持った者がいるかもしれない。
初めて訪れた場所には、場違いなモノがいたりあったりするかもしれない。
これを周知しておくんだ。
うん、道具も対象なんだ。
ワオが乗ってた戦車。あれは過去の地球で実在した物だ。
実物か複製かは問題じゃない。
この世界にあったことが重要なんだ。
そうだな、『場違い』じゃピンと来ないだろうから、『見たことも聞いたこともない』と言っておこう。
ふむ。そう考えると、ハーピーとエルフとドワーフで知識レベルを合わせておく必要があるな。