54.俺、未確認飛行物体っぽく飛ぶ
俺はスライダークゴーレムに乗って飛び出した。
何をするかと言ったら、まず性能テストからでしょ。
スライダークゴーレムは、俺のイメージ通りに動くようにできてる。
エイリアンクラフト的な瞬時停止や鋭角ターン、衝撃波無しの超音速飛行などが可能なはずだ。
それらのやり方も、理論立ててイメージはできてる。
今からそれを検証するわけですよ。
これがうまくいけば、飛行魔法でも同じ動きができるから、空戦能力大幅アップですぜ。
手始めに音速を超えてみよう。
一番の障害は空気抵抗だ。
空気抵抗は、音速付近で一番大きくなる。超えちゃえば、逆に小さくなるんだ。
これは、ティッシュを指で突き破るようなものだと考えればいい。
で、突き破るときのショックが衝撃波にあたる。
この衝撃波、設計がダメダメな航空機だと一瞬で壊れちゃうぐらい凄いエネルギーなんだ。
前世紀のベストセラー本じゃ、飛んでる巨大ヒーローの頭が消し飛ぶぐらいって書かれてた。
衝撃波があるせいで、低空での超音速飛行は基本禁止なんだ。
地上物を破壊しながら飛ぶことになるからね。
衝撃波の実態は音。要は空気の振動だから、逆位相の振動で相殺できる。
大音量のスピーカーから音が聞こえなくなる実験を見たことがある人もいるんじゃないかな?
超音速機にそんな装置を付けるのは非効率。
でも、魔法なら関係ない。
ついでなので、超音速発進も試しておこう。
これは瞬時停止の逆。加速区間なしで目標速度を出すというものだ。
停止も発進も、障害になるのは慣性の法則。ついでに重力だね。
車は急に止まれないってアレですよ。
これについては、スライダークゴーレムと俺を一体のものとして、重力をキャンセルして慣性系を保存すればOKのはず。
成功すれば、瞬時停止や鋭角ターンはできたも同然なわけ。理屈は同じだからね。
それじゃ、レディー、ゴー!
ひゅわん!
よし、成功!
それじゃ、このままジグザク飛行。
おほっ、なかなかいい感じ。
それじゃ、ストップ。
うん、いい感じじゃね。
飛べて曲がれて止まれるゴーレムを手に入れたぞ。
名ばかりのゴーレムは道をあけろ。
それじゃ、ここがどこだかわかんないから瞬間移動で戻ろうか…。
☆
あちこち飛び回って自覚できた。
俺、脳内に地図が描けない人でしたよorz。
いや、住処からどこにどのぐらい飛んだら何があるのかってのは、わかってるんだ。
例えば、右15度にマッハ2で3分飛んだら森があるのは覚えた。これをA地点としよう。
そして、左60度にマッハ2で5分飛んだら湖があるのも覚えた。これ、B地点ね。
それで、だ。A地点からB地点に行けない俺ガイル。逆もまた然り。
考えて試行錯誤するより、瞬間移動で拠点に戻って出直す方がはるかに早い件。
なんていうの、空間認識能力だっけ? アレがダメっぽいですな…。




