52.俺、反省する
呆けてる暇はない!
緊急クエスト発生!
俺は探知を発動した!
「うへっ!?」
魔物が強くなってる!
しかも、どんどん増えていく!
魔物1体の強さは武装したドワーフ3人から10人分!
そりゃ、苦戦しますがな…。
「俺が殲滅する。ルードラ、みんなを下がらせろ!」
「は、はいであります!」
俺は魔法を準備する。
マーブ・フリーズじゃ威力が足りない。
森の被害は覚悟しよう。
「マーブ・エクスティンクション!」
巨大な魔力の塊が森の上に散らばる。
魔力の塊はビーチボールぐらいに分かれてプラズマ球に変わる。
プラズマ球が降下開始。
障害物を消し去りながら魔物に当たる。
魔物たちは消滅した。
撃ち漏らし無し。
ドワーフたちの被害も無し。
ミッションコンプリートだな。
「お、おお。やったでありますよダール様! 魔物が消えたと念話が入ったであります!」
「ああ、今回は上手くいったよ」
☆
「しかし不思議でありますなぁ。なんで魔物が急に強くなったのでありましょうか?」
「俺もそれを知りたかったんだよなぁ」
「なんでですかね?」
騒ぎが収まったので、俺たちは地上に出てる。
もちろん、外に出る前のおまじないは忘れてないよ。
「しかし、今日の空は忙しいよな」
「本当だね。晴れたり曇ったり、これで3回目だね」
最前線だったところで警戒中のドワーフの会話が耳に入った。
……。
…。
まさか…な?
いやいやいやいや。
だがしかし…。
…。
はい、先生!
頭の中で、文句のつけようがない仮説が出来上がりましたー。
うん、間違いなく俺のせいだね。
正確に言うと、弱点克服プランAの副作用だね。
魔物が強くなったり弱くなったりしたのは、空が曇ってるかどうかが原因だね。
弱点克服プランAは、雲を呼ぶ魔法。
おまじないって言ってたのは、これなんだ。
雲を呼ぶのは一瞬。だって、魔法だからね。
で、俺が外にいる間は、雲が晴れないようになってる。
ただ、俺が他に転移したり、建物や洞窟に入っちゃうと、その時点で打ち切り。
あとは、気温やら湿度やら風の具合やらで雲が散るわけですよ。
俺がいなくなってすぐに魔物が強くならなかったのは、それが原因だな。
今回は、魔物を強化したんじゃなく、弱体化させてた。
魔物は強くなったんじゃなく、本来の強さに戻っただけ。
だから、俺は1ミリも悪くない。
まあ、これは裁判モノでよく出るレトリックの類だ。
当事者の感情としたら、「無関係だぁ!? っざけんな! ゴルァーーーッ!!!」に決まってるよね。
実際、俺もそう思うもん。
それに、だ。太陽光に弱い魔物が相手だったら、敵を強化してたことになる。
意図しない形で他人に迷惑をかけるのは、俺の本意じゃない。
だって、気付かないまま去っちゃったら、償う機会がなくなるからね。
ということで、弱点克服プランAは封印しようと思う。