46.俺、横シュー風味のカプセルを作る
今日は、明るくなったらドワーフの都市を見に行こうと思う。
ついでにエルフも呼んで、ナゾノツボミの件も聞くつもりだ。
外来種なら、全部駆除でOKだと思う。
在来種だったら……間引くだけで大丈夫なのかな?
まあ、そのへんも含めて聞くしかないよね。
それで、だ。
そのためには、問題を1つ解決しなきゃいけない。
俺が出かけてる間、住処の見張りをどうするかという難問をだ。
太陽光は大丈夫なのかって?
うん、大丈夫じゃないよ。
でも、対策はできてるから大丈夫。
魔法の神髄を習得済みな俺に、できないことは(いくつかあるけど、ほぼ)ないのだよ。
話しを戻そう。
以前にも言った通り、住処の見張りは必要ない。
以前以上に必要ない。
だって、ハーピーたちがメッチャ強くなってるもん。
今のハーピーたちは、このあたりの食物連鎖の頂点に立ってます。
強者の気配が溢れ出してる洞窟に近付くバカはいませんぜ。
危険感知能力も上がってるから、何かが入ってきても、すぐわかる。
駄菓子菓子。
子どもたちだけに留守番を任せて出かける親の気持ちってやつですよ。
自分がいない間に万一のことがあったら…、って考えちゃうんだ。
子どもが自分を超えたなって納得できるまで、この気持ちは消えないと思う。
と言うわけで、俺の代わりに見張りをしてくれる分身を作っちゃおう。
普通のスライムにできて、俺にできないことがある。
その一つが分裂だ。
ユニークモンスターが分裂したら、ユニークじゃなくなっちゃうからね。
分身は、この制約を利用した能力なんだ。
分裂と分身。
身体が二つになるのは同じだけど、実は全然違うんだ。
分裂だと、片方は俺じゃなくなる。他人に見張りは任せられない。
分身だと、両方とも俺になる。これ以上安心な見張り役はいないよね?
分身には、元の一体に戻れるメリットもある。
一体に戻ると、経験も統合される。つまり、多重影分身で修業時間短縮の真似もできちゃうわけ。
さらに、いつでもどこでも一体に戻れる。
本体が絶体絶命の超大ピンチでも、分身のところに避難できるんだ。
俺は分身の準備を始めた。
まずは、そこいら中にあるマナ――前は謎エネルギーって呼んでたやつ――を集めて凝縮してカプセル状にする。
たまにベル状になることもあるから、注意が必要だ。
カプセルになっても、安心はできない。失敗することもあるからね。
中で赤い円盤状の核がゆっくり回ってれば成功だ。核が青かったら作り直しになる。
それを5個作れば、準備完了だ。
できたカプセルを取り込み、パワーアップボタンを押す(気分)
これで分身が1体出る。
極々まれにだが、カプセルを取り込んだ時に目が回ることがある。
そんなときは、運を天に任せるしかないんだ…。