43.俺、夜間飛行する
ついでだから、もう一つ気になってることをスッキリさせておこう。
「なあ、ここって、この状態が普通なのか?」
「はて? どういう意味でありますか?」
「いや、まるで大災害の後みたいに散らかってるから」
「な、何を仰るでありますか。これは全て、バリケードなのでありますよ」
「そ、そうなのか…。ならいいんだ」
俺の記憶が確かなら、バリケードって、もっと整った形状だったと思うんだが…。
……。
まあ、族長が言うなら、バリケードってことにしておこう。
ハーピーたちは空から攻撃するから関係ないし。
それじゃ、ここに来た本来の目的を果たしますかね。
ドワーフたちに聞いてみよう。
「魔物と実際に戦った者たちに聞きたいんだが?」
「ダール様、大変申し訳ないのでありますが、皆疲れているのであります。明日に備えて休ませたいのでありますが…」
あ、そっか。ドワーフは地下に住んでるけど夜行性じゃないんだ。これは迂闊だったな。
「わかった、休ませてやれ」
「はいであります。みんな、休むでありますよ」
ドワーフたちは穴に戻っていった。
まあ、これは仕方ないよね。こうなったら、予備知識だけでも仕入れとくか。
「なあ、夜は眠るってことは、魔物は昼間しかやってこないのか?」
「そうであります。おかげで吾輩たちでも、これまで戦ってこられたのであります」
「食い止めるのが精いっぱいって、数が多いからなのか? それとも1体1体が強いからなのか?」
「両方であります。バリケードで食い止めて、各個撃破するのがやっとなのであります」
「そうなのか…。ああ、ルードラも疲れてるんだろ? 休んでいいよ」
「はい。失礼するであります」
うん。やっぱ、自分の目で確かめなきゃだめだな。それがよく分かった。
それじゃ、軽く探知してみるか。
それっぽい反応があったら、ちゃちゃっと片付けて一件落着だ。
……。
…。
おかしいな? ドワーフたちが苦戦するほどの反応はないぞ?
武器さえ持ってれば、子どもでも一撃で倒せそうなやつしか見当たらない。
確かに数は多いけど…。
そうだな、折角ここまで来てるんだし、直接見ておこう。
「なあダフネ、俺たちは今からこのあたりを見て回るから、先に戻ってていいぞ」
「えっ? ですが、私たちがいないと転移用魔法陣が使えませんよ?」
「瞬間移動できるから大丈夫だ。エルフも夜は休むんだろ?」
「はい。それでは、お先に失礼させていただきます」
さて、調査に出かけるか。
俺はアケノとビアンカとオトメを連れて、夜の空へ飛び立った。