42.俺、ドワーフの都市に飛ぶ
族長たちから話を聞き、現状は把握した。
それじゃ、最前線を見に行きますか。
理由?
そんなの決まってるでしょ。
戦闘は応接室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!
うん、ちょっと言ってみたかったんだ。
実際、現場をちゃんと見ておかないと、まともな計画は立てられない。
たまにあるでしょ?
ナビでマップだけ見てドライブしてたら、道が狭くて焦ること。
これって事前にルートを調べて、ヤバそうなところは航空写真かストリートビューで見ておけば、起きない悲劇なんだよね。
それと同じことですよ。
と言うわけで、やってきましたドワーフの都市へ。
移動手段は10人まで使える転移用魔法陣。
エルフの集落から一瞬です。
この世界じゃ、エルフとドワーフは友好関係。なので、そーゆー設備がある。
さっき、俺たちが待ってる間に、これを使ってエルフがドワーフたちを連れてきたってわけ。
この世界でも、ドワーフは地下に住んでる。
当然、魔法陣も地下にある。
俺たちは地上へと移動した…。
「ダ、ダール様…」
「ああ、これは酷いな…」
「これではドワーフは…」
「全部崩れているのです…」
俺たちが見たのは、惨憺たる光景。
木々が倒れ、大岩が散乱し、穴だらけの地面。
そうだな、土砂が少ない土砂崩れと言えば伝わるかな?
魔物が持ち去ったのだろう。死骸の類は見えない。
「うむ、今回も無事に撃退できたのであります」
「ダール様がお力を貸してくれるのだ。ここから巻き返すぞ」
???
族長二人は平常運転な様子。
……まさか、この状態がデフォなの!?
「みんな出てくるであります! ダール様が吾輩たちに力を貸してくれることになったでありますよ!」
「!?」
族長の呼びかけに反応し、穴からドワーフたちが出てきた。
…冬眠から覚めたカエルみたいだって思ったのは、心の中にしまっておこう。
……出てきたドワーフは男性ばかり。杖をついてる人から見るからに子供までいるから、全員なんだと思う。
最初は戦場だからかなって思ったんだけど、女性がいないのが気になるな。
いや、平均値なハンターさんじゃないけど、俺もドワーフの女性を見てみたいんだ。髭があるかないかが知りたいんだよ。
「なあルードラ。ドワーフって、これで全員なのか?」
「その通りであります」
「じゃあ、女性っていないの?」
「ダール様、ドワーフと言うのは男の大妖精でありますよ。いるはずがないのであります」
な、なんだってー!?
ああ、油断した俺がバカだったよ。
ドワーフだけイメージ通りなんて話、あるはずないじゃないか…。
「じゃあ、女の大妖精は、別にいるってこと?」
「その通りであります。エルフが女の大妖精なのであります」
「え゛!?」
ドワーフがドワー夫で、エルフがエル婦ってこと?
シオカラトンボとムギワラトンボ、エチゼンガニとコウバコガニみたいなものなの?
ダフネを見たら、うんうんと頷いてた。
ああ、いろいろ腑に落ちたよ。
ドワーフとエルフが友好的なのも当然。
エルフの集落で女性しか見なかったのも当然だったんだ…。




