40.俺、エルフの集落へ行く
俺は今、エルフの集落に来ている。
同行してるのは3名。アケノとビアンカとオトメだ。
残りのメンバーはマリューとナタルに任せた。彼女たちは、森の外で狩りをしてる。
エルフの件が片付くまで、狩場の拡張は一時休止だ。
集落は、認識を阻害する結界と忌避の結界で覆われてた。
存在に気付けないし、なぜか近付きたくなくなるってやつだ。
エルフと一緒に来たから問題なく入れたけど、何も知らずに一人で来てたらスルーしてたと思う。
それで、だ。俺は今、受け入れたくない現実と直面している。
エルフってさ、森と共存してるイメージがあるよね?
創作物にもよるけど、大樹を家にして暮らしてたり、木の上に小屋を作って暮らしてたりさ。
でも、見てくれよ、この街並み…。
メルヘンチックな家が、区画ごとに整然と並んでるんだ。お菓子の家の区画だったり、レンガの家の区画だったり…。
道路は舗装されてて、広い通りには歩道もある…。
これらは全部魔法で造ったそうだから、環境には優しい……んだろう。自信ないけど。
騎士鎧に聞いたら、集落は族長の屋敷を中心にした同心円構造だそうだ。五重丸をピザみたいに八等分したイメージだな。
総人口は3000人ほど。
規模的には、集落と呼んじゃいけないと思うんだ…。
道路にはパステルカラーのターレみたいなのが右側通行で走ってる。
緑系統のは農作物、黄色系統のは木の実や果実、青系統のは魚介類、赤系統のは鹿とか猪を積んでる。
この世界のエルフ、ベジタリアンじゃありませんでした。
あとさ、鹿や猪はわかるよ。森にいるだろうから。魚介類はどこから獲ってくるんだ? タコとかホタテみたいなのが見えたぞ?
ここまでで、俺が持ってたエルフのイメージ、かなり崩れてます。
で、止めがこれ。
ターレに乗ってる人も、歩いてる人も、全員着ぐるみを着てるんだ…。
パッと見ただけなんだけど、コマドリ、ヘビ、アライグマ、キツネ、リス、クマを確認した。
いや、全部とある森の仲間だから、ある意味、森と共存してると言えるよ?
でも、そうじゃないだろって、声を大にして言いたい。
それはそれとして、着ぐるみだと森の中で動きにくくないのかな?
まさか、他所の世界のクマ装備並みのチート装備?
あとで聞いてみよう。
俺たちは族長の屋敷に案内された。
他の家は平屋なのに、この屋敷だけ5階建て。正直に言わせてもらうと、屋敷と言うより五重塔だな。
高いのには理由があって、天辺から結界を張ってるそうだ。
応接室に通された俺たちは、しばらく待つよう騎士鎧に言われた。
おそらくだけど、俺がスライムだってこと、族長に教えてるんだろうなぁ…。




