38.俺、ジャンピング土下座に感動する
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」×9
土下座エルフが頭をこすりつける。
…額に血がにじんでるやつまでいるぞ…。
あ、一人足りないのは気絶中の騎士鎧ね。
うん、マリューの(力技の)おかげで、俺の存在はエルフに認識されたんだ。
ほんの数分前に何があったか説明しよう…。
まず、ドミニカ――マリューのチームのギャルな子――が、メイド服の襟首をつかんでひょいっと立たせた。
で、そのまま軽く羽交い締め。
きょとんとしてるメイド服の目の前に、マリューが俺をグイっと出して一言。
「さあ、もう一度同じセリフを言ってごらんなさい」
さっきと同じく笑顔だけど、全身から威圧感が放たれてる。
メイド服は瞬きを何回か繰り返し、小刻みに震えてから硬直。
ドミニカが手を離すと瞬時に復帰し、見事なジャンピング土下座を決めた。
…俺、ジャンピング土下座を生で見たの初めてだよ。少し感動したのは内緒だ。
残りのエルフも同じような過程を経て、現在に至る。
気絶してる騎士鎧は最初から俺を認識してたから、ある意味マシだったんだな…。
☆
再起動した騎士鎧も俺が何者かを理解した。
それじゃ、改めて質問ターイム。
「お前ら、どういうつもりで俺の配下を襲ったんだ?」
「襲うだなんて、とんでもありません。私たちは、ダール様ゆかりの方々に助けてもらおうと」
「じゃあ、俺たちに敵対する気は無かったと?」
「その通りです」
答えてるのは気絶してた方の騎士鎧。他のエルフの様子からも、彼女がリーダーだとわかった。
「だったら、何でそんな恰好を? 普通に交戦の意志がないことを表せばよかったのに」
「ダール様の仰る通りなのです。強力なマジックアイテムをかざし、怪しげな言葉を叫びながら走ってくるなんて、絶対に敵なのです」
「同感です。大きな布で捕まえに来る者は敵に決まってます」
「暗器を仕込める姿で意味ありげな笑みを浮かべる味方はいませんよ?」
「長物を持って突撃してくるのが敵じゃないとでも?」
「猫は鳥の敵だ!」
「あー、お前らの言うことはもっともだ。でも、少し黙って聞いててくれ。じゃないと、話が先に進まないよ」
俺はみんなをなだめ、騎士鎧に向き直った。
「いや、それは…私たちも反対したんだ…じゃなくて、です。ですが、預言者様が『大丈夫。ダール様ならおわかりになる』と」
「預言者ねぇ。そいつは、今も集落にいるのか?」
「いいえ。預言者様は普段は天上界におられて、神様のお言葉を伝えるときだけ地上に来られるのです」
「なるほどね。で、預言者は俺がスライムだってことは伝えなかったわけだ」
「はい。ゆかりの方々が三位一体となって現れるからと」
ふむ。
さすがの俺も想像できなかったエルフの行動には、天上界がかかわってたのか。
この世界に来て初めて、ご都合主義を外された気がする…。




