4.俺、洞窟を探検する
洞窟に到着。
入り口は大人が2人並んで通れるぐらい。
地面より10センチほど高くなってる。
雨水が入ってこないから、住処にするのにちょうどいい感じだ。
「おじゃましまーす」
一言断って、洞窟に入る俺。
前世の癖が出ちゃったな。
俺、返事がないって分かってても、必ず一声かけてたんだ。
『はい、どうぞ』
え゛っ!?
返事があったよ…。
しかも、頭の中に直接聞こえたよ。
…いや、どの部分が頭なのか、自分でもわかってないんだけどね。
声は幼さが残る女性のもの。
しかも、日本語。
じゃあ、ここは日本……なわけないよね。太陽が2つある世界だもん。そうそう、月も2つあったぜ。
それじゃあ、俺と同じ転生者か?
…いや、違うな。だったら、普通に聞こえるはずだ。
考えてても答えは出ない。奥へ進もう。
ポヨン。ポヨン。
洞窟の中は真っ暗。
ヒカリゴケや光る鉱石があるなんてことはない。
でも、俺の目はちゃんと見えてる。
もちろん、外と同じようには見えてない。
セピア色で見えてるんだ。
そうなる仕組みは見当もつかない。でも、ありがたく使わせてもらってる。
通路を奥へ進む。
凸凹して曲がってるけど、広めの廊下って印象だ。
「おっ」
少し先にある右カーブの先が少しだけ明るい。何がある? 何かいる?
カーブを曲がれば、それがわかる。
俺は少しワクワクしてきた。
「?」
カーブの先の壁には、淡く光る部分があった。しかも、正八角形。
足元を照らせるほどじゃないけど、目印にはなる。
そんな光が奥の方へと並んでる。
これ…、自然にこうなったわけじゃない…よね?
光は全部で8つあった。
通路の先は明るい。
どうやら広間になってるっぽい。
「おおっ」
広間には白骨が転がってた。しかも、磨いたようにピカピカ。
これで上から動かない蛇が落ちてきたら、昭和のバラエティーだよ。
親父が録画してたから、何度も見てたんだ。
「キーッ」
あ、動けないハーピーが落ちてた…。
一応説明しとくと、ハーピーっていうのは、上半身が女性で、両腕は翼。下半身は鳥っていうモンスターね。
ハーピーは一番奥にいて、上半身と両足を丈夫そうな布で縛られてる。イメージ的には、ガムテープでぐるぐる巻きだ。
俺より少し大きいぐらいだから、子どもかな?
怯えまくってるようで、金切り声も小さい。
おっと、考えるのは後。まずは助けなきゃ。
でも、どうやって?
俺、指はないし、刃物も持ってないよ?
いや、待て待て。確かスライムって、都合よく服だけ溶かせたよな。えっちな漫画だと。
だったら、俺にも布を溶かせるんじゃね?
「大丈夫。今助けるから」
「キキー」
ハーピーは頷き、おとなしくなった。
俺の言葉が通じたってことだな。
俺は身体の一部を伸ばし、ハーピーに当てた。
そして、念じる。
「布だけ溶けろ…」
お、魔力を感じたぞ。
おお、本当にできた!
うーん、やっぱり魔法の基準がわからん…。
「キィキィ」
ハーピーが懐いてきた。
モン娘スキーなら感涙モノなんだろうけど、俺にそーゆー趣味はない。
「なあ、お前、どうしてこんな所で縛られてたんだ?」
「キィ、キキー。キィキィキィ…」
むう。俺の質問に答えてくれてるのはわかる。でも、何を言ってるのか全然わからん。