36.俺、エルフに会う
「ダール様、エルフと言うのは、面白い姿をしているのですね」
「ああ、俺も呆れ…じゃなくて、驚いてるよ」
俺は今、森を出たところに来ている。
15人のハーピーたちは、珍獣を見る目でエルフを見てる。
エルフは全部で10人。
うん、エルフは5組のチーム全てのところに現れたんだ。
で、あっさり捕らえられて、俺の指示で一か所に集められたわけ。
捕まえたエルフは全員女性で全員美形。
顔だけ見てると「ああ、エルフだなー」って納得する。
でもね、この世界のエルフって、俺ごときじゃ想像もつかない姿をしてたんだよ…。
アケノに捕まったのは、騎士鎧のお姉さん2人。
予想通り、白旗を持ってました。
この世界に白旗があるなんて思わないし、意味が同じとも限らない。
当然、教えてないから、アケノの判断は正しい。
ビアンカに捕まったのは、時代劇の町娘風のお姉さん2人。
持ってたのは、まさかまさかの直訴状でした。
いや、セリフを聞いたときに、まさかな、とは思ったよ。でもさぁ、まんま同じだなんて、さすがに思わないよ。
ビアンカは直訴状をマジックアイテムだと思ったそうだ。それも、直に触れないほどヤバいやつ。
そりゃ、取り押さえるわな。
オトメのところに現れたのは、チャイナ服のお姉さん2人。
熱烈歓迎って書いた大きな旗を二人で広げて、笑いながら走ってきたそうだ。
オトメたちは、それで包む攻撃だと思ったので、返り討ちにしたとのこと。
うん、どこも間違ってないな。
ナタルのところに現れたのは、猫の着ぐるみのお姉さん2人。
スケッチブックを持ってて、HELP ME!って書いたページを開いて、「助けるにゃー」と言いながら走ってきたらしい。
ハーピーって鳥だからさ、基本的に猫が嫌いなんだよね。猫の姿をしてニャーニャーいうやつは絶対に味方じゃない!
ナタルは問答無用で捕らえたそうだ。よし、よくやったぞ。
マリューのところには、メイド服のお姉さん2人。
首から大きなボードを下げてて、助けてくださいの文字。ひきつった笑顔で近付いてきたんだってさ。
ゆったりした袖と広がったスカートで体形を誤魔化し、さらにボードで身体を隠す。
これ、絶対暗器を隠してるよねと思ったマリューは速攻で確保した。マリューGJ。
チャイナ服だけ持ってる物が変だけど、それは些細な問題だろう…。
俺、自分じゃ相当な数の小説を読んだつもりだった。
でも、コスプレしてモンスターに接触してくるエルフなんて、初めて見たよ。
しかも、騎士鎧は「くっ殺」、町娘は「お代官様」って、お約束まで知ってるんだぜ? おかしさ全開。怪しさも全開だよ。
俺、ここは前人未到の異世界だと思ってたんだ。
なのに、エルフたちから先人の気配がメチャメチャ感じられるんですけど?