35.俺、無理して伝説のネタを仕込む
「マリュー、ナタル、アケノ、ビアンカ、オトメ。くれぐれも気を抜くなよ」
「お任せください、ダール様。それでは、行ってまいります」
代表してマリューが返し、15人が飛び立った。
彼女たちは、森の探索組。
狩りをしながら狩場を広げるのが役目だ。
名前を呼んだのはチームリーダー。
各々が2人を配下にして、スリーマンセルで行動する。
アケノ、ビアンカ、オトメの3人は、索敵力と判断力を重視した選出。外見はお姉さん組だ。
…うん。名前は第一印象だけで付けたから、中身が元ネタと合ってる人は皆無なんだ。ついでに言うと、外見もそう。進化でイメージと違っちゃった人が多いんだ…。
さて、初日からエルフと遭遇するかな…?
個人的にはエルフを見たい。ただ、集団のリーダーとしては、初日からの遭遇はない方がいい。
理想は、相手がこちらの力を認めた上で、友好的にコンタクトしてくること。
それだと、お互い無駄な争いをしなくて済むからね。
などと考えていたら、アケノから連絡が入った。
「ダール様、エルフを2名捕らえました」
…。
いやいや、いきなりですかぁ?
予想の右斜め下の事態。俺、プチフリしちゃったよ。
早速探知で見てみたら…、オイオイ、森に数歩入ったあたりじゃん。
「わかった。それで、相手は何か言ってるか?」
「はい。一人は『くっ、殺せ!』などと物騒なことを言っています」
あちゃー。
この世界にも「くっ殺」がいたのかよ…。
「で、もう一人は?」
「たとえどんな辱めを受けようとも、私は何もしゃべらん。だそうです」
俺は軽い眩暈を覚えた。
なにがどうしたらそーゆー展開になるの?
「なあアケノ。その2人、いきなり襲ってきたのか?」
「はい。2人とも先端に白い布を付けた長い棒を持って、私たちの方に突撃してきました」
「そうか、それは大変だったな」
「はい。しかも、私たちを油断させようと『お助けください』と叫びながらです」
ん?
先端に白い布を付けた棒を持って…、お助けください…だと?
まさか…、白旗?
などど思っていたら、今度はビアンカから連絡が入った。
「ダール様、エルフを2人捕まえましたです」
「おい、そっちもか?」
「そっちもって、どういうことなのです?」
「いや、アケノも2人捕まえたって連絡してきたところなんだ」
「ええっ!? ちょっと待ってくださいよダール様。じゃあ、アケノのところにもエルフがきたんですね?」
「…そぉーなんです。アケノがいるA地点にも、ビアンカがいるB地点にも、エルフが現れたんだよ」
「それは大変なのです、ダール様」
「それでビアンカ、エルフは何か持ってないか?」
「それがですね、竹の棒の先に、変な模様がある白い物を挟んでるです」
「ふむ。で、エルフは何か言ってる?」
「お願いでございます、お代官様って、変なことを叫んでるです」
…まさか、変な模様がある白い物って、直訴状じゃないだろうな…?




