34.俺、竜王に念話してみる
ハーピーたちの編成を考えながら、俺はあることを思いついた。
竜王なら、このあたりの状況を知ってるはずだよな。管轄域なんだから。
狩場を広げても大丈夫か聞いてみよう。
相手はこの世界の偉い人。アポなしで行ったら会ってくれる保証がない。まあ、そもそもアポの取り方がわかんないんだけどね。
ということで、ダメ元で念話してみよう。
ハーピーたちの練習相手をしたおかげで要領はわかったから、たぶん行けるはず。
俺は竜王を思い浮かべ、念を送る。
……使ってみてわかったけど、電話みたいな呼び出し音が鳴るんだな。語感が似てるのも納得だよ。
竜王は2コールで反応した。
『ダール殿か。そうか、念話を覚えたか』
「ええ。聞きたいことがあったので、試しに使ってみました」
『試しにということは、私が最初の相手か。それは僥倖。何なりと聞くがよい』
向こうがOKしてくれたので、話が早い。
俺は狩場を広げたいことと理由を話し、周辺の情報を聞いた。
「…なるほど、森林地帯にはエルフの集落があって、カラスが来た方には人間の町があるんですね」
『うむ。私から見れば、等しく小さき者たちだ。だが、彼らにも矜持はある。それだけは注意しておかれよ』
「ええ、わかりました。ありがとうございます」
『よいよい。また何かあれば、遠慮なく念話してくれ』
「はい。それじゃ、失礼します」
うん、念話してよかった。
エルフや人間に遭遇する可能性があるってわかったのは僥倖だ。
計画通りに狩場を広げていくと、先にエルフと接触するかもしれないのか…。
入り口がある崖の上は、草がまばらな荒地。
緩い下り坂になってて、草原から森林へと変わっていくんだ。
こちら側がやや狭いのは、ハーピーは森林が苦手だったから。
森の中は飛びにくいし、歩くのも大変。境界付近で動きの遅い虫を獲るぐらいしかできなかったんだよ。
でも、今は違う。
駆け回れる足がある。物を掴める両腕もある。飛んだり跳ねたり回ったり、体操選手以上にアクロバティックな動きもできるんだ。
森で狩らない選択肢はないよね。
エルフの集落の場所は、あえて聞かなかった。
どのみち遭遇を警戒しながら行動することになるからね。
下手に「この辺は安全だよね」と気を抜くより、全域で気を張ってた方がいい。
実際に接触して、友好関係が確立するまでは、このスタンスで行くつもりだ。
俺個人としては、この世界のエルフに興味津々なんだ。
だってほら、エルフって、創作物ごとに設定が違うじゃん?
共通点は、森に住んでて耳がとがってること。
人間が好きだったり嫌いだったり、排他的だったり友好的だったり、スレンダーだったりグラマラスだったり…。
ぶっちゃけ、人間の何倍も会ってみたいです。