28.俺、決断する
さて、どうしたものか…?
俺は今のやり取りで決断を迫られた。
それも、今後のスラ生――前はスライム生って言ってたけど、長いから今後はこれで。イムが嫌いなわけじゃないから、誤解しないでね――を大きく左右するレベルの決断をだ。
俺は何も考えずに「冷凍保存」と口にし、簡単に説明した。
だって、常識だからね。
でも、それはハーピーたちにとっては天上界の知識。叡智と言っていいレベルだったんだ。
実際、魔法に関しては、俺の知識は叡智そのもの。小説に書かれた超魔法の数々、科学的知識、破壊や爆発の映像等々。それらを駆使すれば、大抵のことはできるだろう。
Q.基礎知識ゼロの人が叡智を手に入れたらどうなるか?
A.高確率でやらかす
これは古今東西、いろんな形で語られてる。
そう、俺は自分が持ってる知識をこの世界に広めるかどうか、広めるなら線引きをどこにするか、それを決めなきゃいけないんだ。
これは、最初に広めるのが人外だから悩んでるわけじゃない。
人間の王侯貴族や学者が相手でも、俺の対応は同じだと言っておこう。
まず、俺は、あるがままの環境で過ごすのが好きなんだ。
都心には都心の、郊外には郊外の、地方都市には地方都市の良いところがあり、そうじゃないところがある。
俺はそーゆーものを全部楽しみたいんだ。
だから、この世界も、そのままであってほしいと思ってる。
エゴだとわかってるけど、俺の知識が原因でバランスが一気に崩れるような事態は避けたいんだ。
そう思う一方で、快適さや便利さは欲しい。
冷蔵や冷凍ができれば、獲りすぎた獲物を無駄にしなくて済むし、毎日狩りに出なくてもよくなる。
内線があれば、連絡や呼び出しが楽になる。
今の生活だと、とりあえずこんなとこ。
日本の食べ物や娯楽を再現しようとまでは思わないけど、このぐらいならいいかなって思ったりもするんだ。
うーん。
うーーむ。
むむむむむ。
いやいや、何やってもいいと思うと、逆に悩むな。
これはダメって言われれば、じゃあ、やっちゃおって即決なのに。
時間を加速して悩んでる俺の耳が、ハーピーたちの声を拾った。
「冷凍保存か、早く見たいものだな」
「私も氷魔法使えないかな」
「ダール様に教えてもらいたいですぅ」
よし、決定!
可愛い娘たちがこんなにワクテカしてるんだ。その夢を叶えないでどうするよ!
ついでに、当面の目標も決まったぞ。
「あー、今ちらっと聞こえたんだけど、みんな、氷魔法って使えないの?」
「はい。誰も使い方を知らないんです」
「そうか。冷凍保存をするなら、氷魔法の使い手は一人でも多い方がいい。俺が教えるから、希望者は狩りが終わってからここに集合」
「はい!」×たくさん
うん、予想通りの反応だ。
ハーピーに魔法を教えるのは、戦力的にもメリット大。
当面の目標は、俺抜きでもカラスの1個師団を撃退できるレベルだ。
ということで、カリキュラムを考えよう。