20.俺、トンネルを抜ける
手合わせの後、俺は竜王に聞いてみた。
「俺、イメージしただけなんですけど、何故それで強さがわかるんですか?」
「イメージこそが魔法の基本であり神髄だからだ。ダール殿が見せたイメージは、明確で、詳細で、とても強かった。つまり、魔法で同じことができるということだ」
「えっ!? じ、じゃあ…」
「そうだ。くれぐれも、自重してくれ」
☆
竜王との会見は有意義なものだった。
何より、魔法の可能性が広がったことが大きい。イメージさえできれば、新魔法がいくらでも作れるんだ。
それじゃ、ちょっと実験してみるか。
「マリュー、フレイ、俺の体に触っててくれ」
「「はい」」
マリューが俺を抱き上げ、フレイが触る。
俺は拠点を思い浮かべ、一瞬でそこへ飛ぶイメージを練り上げる。
魔力が良い具合に高まってきた。
よし、これなら大丈夫!
「瞬間移動!」
俺たちの足元に円形の魔法陣が浮かび、そこから光のパイプが伸びる。
パイプは拠点の方へ伸び、光のトンネルが出来上がる。
その瞬間、俺たちは拠点に向けて発射された。
「おお、すげー!」
「ダ、ダール様、これは何ですか?」
「新しい魔法、瞬間移動だ。ほら、もう見えてきた」
「すごい、すごいです!」
冗談みたいな速さで移動してるのに、風も加速Gも感じない。
行きは3日の行程が、帰りはせいぜい3分ほど。
やっぱ、魔法って便利だね。
俺たちは拠点に到着。光のトンネルは粒子になって消えていった。
「マ、マリュー!? えっ!? フレイも? ダ、ダール様!?」
偶然この場に居合わせたジュリが、驚きの声を上げた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日、狩りのために探知を使った俺は、重大な発見をしてしまった。
「うーん、まずいな」
「何がでしょうか?」
「このあたりの食糧が、目に見えて減ってるんだ」
「えっ!?」
「なんだナタル、気付いてなかったのか?」
「いえ、全然。確かにダール様がご不在だった間は狩りに時間がかかりましたが、私たちが未熟なせいだとばかり思っていました」
そうは言ったけど、これはナタルだけのせいじゃない。効率を考えすぎた俺にも責任がある。
そもそもの話、たった3日で虫も小動物も減りすぎてるんだよ。
これは、早急に原因を突き止めて対策しないと超まずい。
俺は探知を強化して、注意深く狩場を見る。
………。
……。
…。
むう、怪しいところは何処にもない。
考えてみれば、当然かも。変わったことがあれば、ナタルたちが気付いたはずだ。
ということは、昼間に何かが起きてるのか?
うん、そう考えるのが自然だな。
昼間外に出るしかないのか…。