19.俺、竜王に投了させる
「立ち話もなんだな。まずは座ろうか」
「じゃあ、遠慮なく」
軽く握手を交わした後、俺たちは腰を下ろす。
俺は長椅子の上座の位置。正面に竜王。俺の隣はフレイ、その隣にマリューの並びだ。
「しかし驚いたな。まさか、落とし子殿がダールを名乗るとは」
「その言い方だと、竜族にも落とし子の言い伝えが?」
「ああ、ある。彼の者、欠けることなきことを、名をもって示すとな」
「それがダールなのか?」
「いかにも。ダールとは丸い盾。欠けることなき者に、これ以上相応しい名はなかろう?」
「驚いた…。そんなこと、全然知らなかったよ」
「ああ、私も驚いたぞ。名前だけでなく、身体も欠けることなき者だったからな」
これには思わず苦笑した。笑い顔はできないから、声を出してプルプルしたよ。
その後は、俺がどーゆー経緯でハーピーたちと知り合ったかの説明。当然、竜王はフレイに声をかける。
「そうか、そなたが」
「は、はい。あ、あの…竜王様、どうして私をこの場に呼ばれたのでしょう?」
「ああ、それ、俺も聞きたいって思ってました」
「私もです」
俺の口調が変わってるのは、年配者への敬意だ。無理に対等にしゃべっても、気疲れするだけだからね。
竜王は少し間を置き、答えをくれた。
「縁だな」
「縁?」
「ダール殿の歩みは、アキラ様の導きであろう。ならば、マリュー殿たちとの縁を取り持ったフレイ殿とも直接会い、縁を持ちたかったのだよ」
「なるほど。俺が貴方の立場でも、同じことをしたと思います」
竜王の言葉に嘘はないと思う。でも、何か隠してる。なんとなくだけど、そんな気がした。
その後も色々話し、俺も竜王も、敵対する意思がないことを確認し合った。
大国同士の腹の探り合いみたいだけど、これは仕方ない。
実際、200を超えるハーピーバロネスは、この世界じゃ強力な戦力なんだ。
そうだな、空を飛べて混乱と睡眠を使えるオーガが200超いると思ってくれ。
そろそろ引き上げるかなと思ったら、竜王が唐突に切り出した。
「ダール殿、無理を承知で頼みがある。私と手合わせ願いたい」
「かまいませんが、どうしてですか?」
「なに、いづれ世界を動かす者の力、知っておきたいと思ってな」
「いや、俺、そんな気は無いですよ。それと、場所はどこですか?」
「そこに座ったままでいい。こう戦うというイメージを描いてくれれば、私に伝わる」
「わかりました。じゃあ、行きます」
これはラッキー♪
さっきこっそり試された分も返しちゃおう。
俺は自分の特徴を究極まで高めたイメージを描く。
スライムの特徴、それは何でも食べられること。そう、悪食ってやつだ。
それがどうしたって思った奴、認識が甘いな…。
いいか、よく聞け。悪食はなぁ、某VRMMOの運営が弱体化調整するほど凶悪なんだぞ(謎)
動物、虫、植物だけじゃない。その気になれば、土や岩や金属も食べられる。この世界には無いと思うけど、プラスチックも行けると思う。
それをさらに膨らませる。
炎、電気、酸、毒物、病原体…etc.
あらゆるものを飲み込む。大地、海、そして惑星まで…。
「ま、待ってくれ…。もう十分だ」
竜王が絞り出した。
うーむ。俺の力、竜王の予想を軽く超えていたようだ…。




