142.俺、今度は何スライムになったんでしょうか?
ミニスライムたちは、俺の周りをゆっくりと回り始めた。
最初はバラバラだった周回軌道は次第に同一円上になり、間隔も揃ってきた。
これ、イメージ的には原子モデルだな。俺が原子核で、ミニスライムたちが電子。ちゃんと描けば内側に電子が2個あるんだけど、そこは目をつぶろう。
「!」
ミニスライムたちが、少しずつ大きくなってる。しかも、軌道が小さくなってきてる。
このままだと、俺に密着コースなんですが?
そうなったら、ドーナツ屋さんのライオンみたいな絵面になりそうだな。
たてがみを食べろってことにはならない…よね?
ミニスライムたちは、俺に密着して止まった。
俺、マジでドーナツ屋さんのライオンの頭みたいになってます。
まさか、これが進化後の姿とか?
形状も色合いも不自然すぎませんかね?
バルーンアートに見えたオクトスライムの方がマシに見えるんですけど?
「!?」
ミニスライムたちは、俺に何かを送り込んできた。
昭和の時代の特撮物で怪しい雲が広がるような感じで、俺の中に8色の何かが注入されてくる。
不快じゃないけど、見てて気持ちいい物じゃない。
そも、全部混じったら何色になるかを考えると、俺、すごく不安です。歪なレインボーカラーみたいになるのか、それともダークになるのか…。
ミニスライムたちは全て俺の中に入った。
うん。外袋的な物が残るかと思ってたんだが、全部入っちゃったんだよ。どういう構造になってたんだろうな?
あ、なぁんだ。ミニスライムたちが俺に何かを注入したんじゃなくて、俺がミニスライムたちを吸収したのか。納得。
で、俺自体はというと、今のところ、何かが変わったという実感はない。
気になってた身体の色も、式典の前と変わってない。
そうそう、ミニスライムたちは、G細胞が姿を変えたものだった。
イベントで集めた7個と、タチネズミが持ってた1個を合わせて8個。
それがヴェーダカプセルの中で、八識に対応したシンボルに変わったんだ。
もちろん、それは天上界の仕事だ。
俺の異袋とヴェーダカプセルをつなげて、消えたと思ってたG細胞を送り込んでたんだ。
……ちょっと待て。
俺、何でそんなことを知ってるんだ?
天上界に来た時点で、分身ズは停止中。
新しい情報は入ってこないはずなんだが…?
えっ!?
なっ、ナニコレ!?
俺の知識、爆発的に増えてるんですけど!?
この世界の地理、全部頭に入ってます!
生態系もバッチリです!
さらにさらに、地上のいろんなことがリアルタイムでわかっちゃいます!
精霊たちがどこにいるとか、聖獣たちが何してるとか!
あ、獣王の管轄区域にスライムの群れを発見。
うわっ、そこでもオーロスライムがボスなのかよ…。
ついでに、今度の手下はクラゲ型だよ…。
うーむ。
天上界にいるからと言って、いきなり世界のことがわかるようにはならないよね。
元は神だったピッコ□さんはともかく、カカ□ットはそうじゃなかったはず。
どうしてこうなった?
あ、そういうこと。
俺、進化じゃなくて、神化したんだ。
G細胞を8個も取り込んだんだから、そうなっても不思議じゃないか…。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
活動報告でサラリと触れましたが、本作は次話が最終話となります。




