141.俺、RGB加法混色も覚えました
むう。G細胞回収イベントは、進化の条件になってたのか。
しかも、成績って言葉が出るということは、あらかじめ決められてた基準に沿って採点されてたことになる。
うん。試練というより試験だな。昇級試験とか昇格試験とか、そんな感じだ。
うーん。組織の中で選抜するなら、試験は定番のやり方だ。でも、進化にそこまで大げさなことをするかな、普通?
ま、俺はクリアできたわけだから、もうどうでもいいことだけどね。
で、これより進化の儀ってことは、俺、また寝るんですかね?
式典の主役は俺だと思うんですが、寝ちゃっても大丈夫なんでしょうか?
あ、前回は進化することが予想外だったから、進化後のアレコレを決めるまで寝てもらうって言われた記憶があるな。
今回は合格することも想定してただろうから、寝なくても大丈夫じゃないかな?
俺の予想は的中。隣のお姉さんが俺に告げる。
「それではダール様、ヴェーダカプセルをお出しください」
ヴェーダカプセル? 初めて聞く名前ですけど、何ですか、それ? 俺、そんな物、持ってましたっけ?
あっ、G細胞を収納してたカプセルの名前か!
ヴェーダって…、確か古代インドの聖典のことで、元々の意味は「知識」だったな。
むう、ベータなカプセルのパチものだとばかり思ってたら、そんなたいそうな名前だったとは…。
俺はヴェーダカプセルを取り出し、改めて見た。
赤いボタンは暗くなり、青いボタンが点滅してる。
てことは、何、このボタンをここで押せと?
えーーっと、皆さんご存知だと思いますが、この中には、俺が集めたG細胞が7個入ってるんですよ?
本当に押しちゃっていいんでしょうか?
いや待て。
俺が自発的に押す必要はないんジャマイカ?
これは式典なんだから、進行の人に任せればいい。
「ダール様、点滅している青いボタンを押してください」
おおぅ。思ったそばから来ましたよ。
まあ、G細胞って元々が天上界の管理物件だし、式典が一転して阿鼻叫喚なんてことにはならないよね。
俺は一度深呼吸――気分だけ――をしてから、青いボタンを押した。
「!?」
カプセルが何かを吐き出した!
大きさはテニスボールぐらい。
数は全部で8つ。
色はホワイト、イエロー、マゼンタ、シアン、グリーン、レッド、ブルー、ブラックと、それぞれ違う。
半透明なそれらは、大きなシャボン玉みたいにフヨフヨ変形しながら俺の周りを漂ってる。
例えるなら、空中を漂うミニスライムってところかな? 生き物とは断定できないけど。
G細胞が出てくると思い込んでた俺は、完全に意表を突かれた。
ん? 収納されてるG細胞って、7個だったよね?
てことは、ミニスライムたちって、G細胞が変化したわけじゃない…のか?
あ、お姉さんが俺から離れた。
これは、ミニスライムたちが俺に何かするってことですね…。