136.俺、紋章が浮かび上がる
STAP細胞が凄いのは、再生の万能性だけじゃない。
少しだけど確実に、オリジナルより基本スペックが上がるんだ。
分身ズによると、キンリーは日本がバブルだった時代の定期預金の金利分ぐらい、素の能力が上がったらしい。
一桁%だけど、レアアイテムのドロップ率と考えたらバカにできない上昇だ。
実際、聖獣クラスになると、一桁%の数値が雑魚モンスター数体ぶんになるからね。
そうそう、マナイーターだった時のキンリーの外見は、幻の闇水晶と融合したことで変貌したものだった模様。
これまでもアレな変貌を遂げたやつが多かったから「あっ、そう」レベルだけど、そういうことだ。
そして、ここからが俺自身にかかわる内容になる。
一番の関心事、消えたG細胞は、ごく一部がキンリーの再生に使われたらしい。
で、残りの大部分は俺の一部になったとのこと。
効果は今のところ不明。今の分身ズの権限でも、情報にアクセスできないそうだ。
予想としては、俺も不滅の仲間入りって線が有力だな。
最後の七大罪能力の強欲は、無事にゲットできた。
効果はマナの奪取。傍から見てると、マナを食べるとういうか、吸い取るというか、そんなイメージになると思う。
なお、他人から奪ったマナを、直接別人に渡すような使い方はできない模様。
それでだ。
今俺が気にしてるのは、シルフとキンリーがいつまでここにいるのかってこと。
二人がいる間は、ゲットしたG細胞を収納できない。つまり、お使いイベントを完了できないからね。
かと言って、「ぶぶ漬けでもどうどす?」なんて言うのは……ねえ。仮に言ったとしても、通じるとは思えないし…。
「おいダール、ちょっとこっちに来てくれ」
シルフに呼ばれ、俺の思考は中断。
見るとハーピーたちの騒ぎは収まり、キンリーの前に行列を作ってた。
えーっと、これは…、握手会か何かですかね?
ポヨンポヨンと近付いたら、キンリーが翼から羽根を抜いては、ハーピーに渡してました。
そして受け取った方は、それを自分の翼に挿す。
すると、なんということでしょう。
羽根は翼と一体化。しかも、ハーピーの素の能力が少しアップ。
さすが聖獣の身体の一部。確かなご利益があるんだな。
「さあ、ダール様も」
「?」
俺はマリューに抱きかかえられ、そのままキンリーの前へ。
いや、俺が羽根を貰っても、一体化はしないと思うぞ?
キンリーは微笑みながら、俺にも羽根を差し出した。
「ダール殿、此度はたいそう世話になったのじゃ。妾の居城の通行証を渡す故、気が向いたときにでも顔を出してほしいのじゃ」
ああ、この羽根って、そういう役目も果たすのか。
俺は身体から右手を生やし、キンリーの羽根を受け取った。
「!」
羽根は吸い込まれるように俺と一体化。あとには鳥の頭を模した紋章がうっすらと浮かんだ。