14.俺、定番の魔法を試す
さて、気分を切り替えよう。
さっきチラッと言ったけど、俺は今、ハーピーたちの住処で見張りをしてる。
でもね、ぶっちゃけると、今は見張りは要らないんだ。
昨日までは、必要だった。
金メッキ配下のスライム集団が子どもをさらいに来たりしたからね。
でも、金メッキがいなくなった今、集団行動するスライムはいなくなったと、そーゆー話なんだ。
…ああ、地味にショックだったよ。普通のスライムは、日中でも普通に活動できるそうだ…。
俺は暇つぶしを兼ねて、小説で定番の魔法を試すことにした。
地図はダメだったけど、他は使えるかもしれないからね。
というわけで、まずは転生の先輩・蜘蛛子の序盤の強敵だった、アレからだ。
俺は洞窟の壁に向かい、定番の言葉を口にする。
「鑑定!」
……。
…何も起きない。『壁』とすら出ない!
これはあれか? 鑑定は鑑定士にしか使えないのか? それとも司教なのか?
ぬう。残念だが、とにかく俺には使えないようだ。
仕方がない、次だ。
これは、俺の役に立ってくれるはず。
「探知!」
……。
…おお、五感が強化されたぞ!
それに…なんか自分の周りに靄っぽいものが見えるな? これ、なんぞ?
おおっ! 壁の中にハーピーの形の靄が見える!
ってことは、これは生命力とか魔力とか、それっぽい何かが見えてるってことか!?
周りに何がいるのかわかる!
しかも、障害物関係なし!
うはっ、探知SUGEEEE!!
よぉーし。次、行ってみよう。
自分の能力がどれぐらいなのか、客観的に知りたいよね? ということで、これだ!
「ステータス!」
……。
…何も起きないな。
うん、なんとなく見えてきた。
出来なかった魔法は、地図に鑑定にステータス。
これって、本来なら、紙に書いてあったりモニタに表示されたりしたものを見るよね。
そーゆー類の情報を得る魔法は使えない感じだな。
…ひょっとして、頭の中にホワイトボードがあって自分会議を開ける人なら使えたりする…のか?
次は飛行魔法だ。これは美少女天才魔道士とか、騎士爵家の八男坊とか、強いキャラには必須な魔法だ。
「例のウイング!」
「こう、即、飛翔!」
魔力は感じるんだけど、なぜか飛べない。たぶん、俺に合ってないんだろうな。
で、色々試した結果、これで飛べた。
「スライングソーサー!」
…うん、わかってる。普段が円盤みたいな姿だから、つい言っちゃったんだ…。
根拠は無いけど、攻撃魔法は何でも使えそうな気がする。
実際問題、ここで試すのはまずい。
かと言って、俺は昼間は出歩けない。
となると、魔法の検証は一区切りだな…。




