132.俺、属性が大ピンチです
ここで、使い古されたネタを一つ。
男子「俺、少しぽっちゃりしてる女の子が好きかな」
女子「私、少しぽっちゃり気味よね」
うん。男子が思うぽっちゃりと、女子が思うぽっちゃりの間には、少なく見積もっても元プロやきう選手と怪獣王の着ぐるみぐらいの差はあるんだ。
それと同じで、だな。
シルフの「少し」は、俺にとっては「結構」とか「かなり」なんですよ。
そんなわけで、俺、バランスボール(大)より大きなサイズになってます。
うーむ。
いったい何が起きたんだ?
まさか、異袋になきゃいけないはずのマナが、俺の体内に来ちゃってるとか?
いや、それはない……と思うな。
だって、はるかに大きなフェニックスを食べたときだって、こんなことは起きなかったもん。
何かを分解してできるマナの量は、体積と質量の両方と相関関係にある。
つまり、はるかに小さくはるかに軽かったマナイーターからフェニックス以上のマナが得られることは、普通に考えたらあり得ない。
あ…、待てよ。あり得る…かも…?
俺が普通じゃあり得ないことやっちゃったから、普通じゃあり得ないことが起きちゃった可能性があるよ!
えっ? わからない?
ほら、俺ってユニークモンスターでしょ。
てことは、俺の力が2人ぶんかかるなどということは、本来なら絶対に起こらないわけ。
俺もそうだけど、並の武器じゃ耐えられない威力の攻撃を繰り出せるユニークな存在2人ぶんの力が合わさるとどうなるか?
その答えは「大魔王の力で封印された絶対に開かない魔宮の門を砕けるほど凄い力になる」だ。
それでだな。
俺、分身とあわせて5人分の力で異袋を思いっきりシェイクしたでしょ。
これがまずかった可能性は、否定できないと思うんだよね…。
実際、不滅なはずのG細胞が消えちゃったし…。
あー、またやらかしちゃったか…?
ただ、不思議なのは、俺、体内のマナが増えたって感覚はないんだよね。
マナが増えると、普通はパワーがみなぎるとか、イケイケな気分になるとか、身体が軽く感じるとか、そういうポジティブな感覚になるんだ。
でも、今の俺は、身体がだるくて重くて自分のものじゃない感覚までしてるんだ。
どう見てもポジティブじゃないよね。
食べすぎとも違う感覚だし…。
俺、どうしちゃったんだ…?
頭を抱えたい気分の俺に、シルフの声が届く。
「ん? おいダール。お前、今度は光ってるぞ」
「え゛!?」
普段の俺は、照明器具のリモコンのONボタンぐらいに光ってる。
日中はわからないけど、夜間はわかるレベルだ。
まだ暗くなってないのにわかるってことは、それだけ明るくなったってことだ。
あー、俺、マジでヤバいかも。
明るくなってる自覚は全然ない。さらに、身体の半分以上が自分のものじゃない感覚になってる。
光りながら消滅するのって、ファンタジー物じゃ定番の一つじゃないですかぁ!!
俺に万一のことがあったら、代わりはいないよね?
これは……まさかのバッドエンド?
創造主の次回作にご期待くださいってか?
やがて、俺の身体の俺じゃない部分は俺から別れ、意志を持っているかのように動き出した。
なん…だと…?
俺、まさか分裂した!?
いやいやいやいやいやいやいやいや、俺、ユニークモンスターじゃなくなっちゃったの!!?