124.俺、ローンで超低金利の恩恵を受けてました
「そんな…ウソだろ、おい…」
「?」
いつもの5倍ある聴力がシルフの呟きを拾った。
反射的に目をやると、シルフは驚きの表情。全身はワナワナと小刻みに震えてる。
これは……マナイーターに何か心当たりがある? でなきゃ、想像をはるかに超える強さを感じたとか?
これは聞いておくべきだな。情報は多いほどいい。
そう思ったところに、分身から声がかかった。
(ダメです。今のままじゃ封印できません)
(弱らせないと無理)
むう。
強欲は羨望より格上なのか? それともマナイーターの本体が強いのか? 両方ってのもあり得るな。
いや、考えるより動け!
分身一号と二号、怠惰で奴を弱らせてくれ!
(了解だぜ!)
(任せろし!)
それじゃ、シルフに声をかけるか。
「シルフ姉さん、どうしたんですか?」
「えっ? あ、ああ…。い、いや…あ、あたいは、ど、どうもしてないぞ?」
「いや、見るからに動揺しまくってます! 理由を教えてください!」
「あ、ああ…。わかったよ。でもいいか、聞いて驚くなよ」
「大丈夫ですよ。俺、多少のことじゃ驚きませんから」
「そ、そうか…。じゃあ言うぞ。マナイーターはキンリーだ」
「?」
キンリーって、カナ○グースのレディース向けアウター……なわけはない…よね? この世界にカナダ○ースがあるとは思えないもん。
となると、マナイーター本体の名前……だろうな。
で、そいつは精霊が動揺するほど強いってことか。いったい何者なんだろう?
「うわっ、本当に驚かない! ダールって、あたいが思ってた以上に肝が据わってるんだな…」
「いや、驚くも何も、俺、キンリーってやつが何者なのか知りませんから」
「え゛っ!?」
シルフはマジで驚いた!
いやちょっと、その反応はないんじゃないですかね?
俺、変なこと言ったつもりは1ミリもないですよ?
「いや、驚いてないで、ちゃんと教えてくださいよ。キンリーって、何者なんですか?」
「いや、ちょっと待てよ。お前、キンリーを知らないのか? 鳥帝だぞ? 南方の守護鳥だぞ?」
「え゛っ!?」
なん…だと…!?
な、なんだってー!?
そマ!?
mjsk!?
ああ。俺、これだけ並べても言い足りないぐらい驚いたよ。
対するシルフは少しドヤ顔で口を開く。
「なぁんだ、やっぱり驚くじゃないか。あー安心した」
「いやいやいやいや、そりゃあ驚きますよ! いきなり南方の守護鳥なんて言われたら! ていうか、それを先に言ってくださいよ!」
「いやいやいやいや、それ、おかしいだろ? お前のとこだって、鳥帝の管轄区域だろ?」
ああ、納得。
シルフの中じゃ、そういう認識だったわけだ。
そりゃ、俺がキンリーを知ってて当然だと思うよね。
「違いますよ。俺がいるところは竜王の管轄区域ですから」
「あれっ? そうだったっけ?」
「そうですよ」
(ヘイ本体、バッドなニュースだ)
「えっ? 今度は何?」
「ん? ダール、いきなりどうした?」
あ、分身への応答を声に出しちゃった。
しかも、しっかり聞かれて声までかけられた。
これは結構恥ずかしいです…。