13.俺、お墨付きをもらう
考えてみたら、転生できたのは神様のおかげだ。
神の落とし子でも不思議じゃないな。
となると、少し気になる事が…。
一週間前に神託があったってことは、俺の転生は神様の予定通り?
…いや、よそう。この件は考えちゃいけない気がする。
それよりも、だ。
俺、好き勝手に行動してたはずなんだ。
なのに、言い伝え通りにハーピーたちのところにいる。
これ、重大な使命とかがあるパターンだよね?
厄介ごとの予感しかしないよ…。
「それで、俺にはどんな使命があるんでしょう?」
「何もございません」
「えっ!? 魔王になるとか、英雄になるとか、そーゆーのは無いんですか?」
「はい。ご神託を受けたジュリによれば、『勝手にしやがれ』だそうでございます」
…なぜだろう? 急に帽子を投げたくなったぞ。
それはさておき、これはいいことを聞いた。
俺、神様公認で自由気ままに暮らせるのか。時代劇なら、お墨付きとか天下御免ってやつだな。
それじゃ、ついでだから、これも聞いておこう。
「じゃあ、俺には特別な力があったりします?」
「わかりません。あえて申し上げるなら、貴方様の魔法の威力は特別でございます」
「そうか、ありがとう。じゃあ、俺はこれで」
「ああっ、お待ちください。まだお礼が。それに、ぜひともお願いしたいことが」
…それもそうだな。
それじゃ、お言葉に甘えてゆっくりしていこう…。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
あーーーーっ、適当な理由付けて、さっさと立ち去ってたらよかったよ…。
外は既に明るい。
ハーピーたちは寝ている。
この世界のハーピーって、夜行性だったんだ。
昼間でも活動できるけど、獲物が少ないから寝てるんだって。
俺?
どうやら、寝る必要がないらしい。昨日からずっと起きてるけど、全然眠くならないんだ。当然、パフォーマンスも落ちてない。
ついでに、飲み食いも必須じゃない模様。水分さえ蒸発しなければ、だけどね。普段はそこら中にある謎エネルギーを自動で摂取してるらしい。
人間だったら、超便利な社畜ルートまっしぐらです。
まあ、眠らなくてOKだからって見張りをしてる時点で、それに近い気がしなくもない。
いや、見張りが嫌だから立ち去ったほうが良かったって思ってるんじゃないよ?
俺、急ぎの用事とか無くて暇だったから、ちょうどよかったし。
俺が頭を抱えてるのは、「知らずに一生を終われば幸せだよね」的なことを聞いちゃったからなんだ。
ま、知らずにトラブルの種をまいたのは、俺自身なんだけどね…。
俺、この世界の強者に目を付けられた可能性があります!
原因は、『名前持ち』を倒したから。それも2匹。
うん。最初に倒した超巨大熊、あれも名前を持ってたんだ…。
そして、この世界にもあったんだよ。いわゆる『名付け』のシステムが。
同格以上と認めた相手に名前を付けてもらうと能力が上がる。これが名付けの基本だ。
名前を貰った者は、目に見えて強くなる。名前持ちと呼ばれ、他と区別されるんだ。
さらに、2人の間には絆の回線ができ、互いの生死がわかるようになる。絆が強ければ、感覚の共有もできるらしい。
つまり、俺は熊の名付け親と金メッキの名付け親の恨みを買った可能性があると、こーゆーわけ。
モンスターの襲撃を受けたとき、「この世界のモンスターは好戦的だな」と思うのと、「また報復か?」と思うのじゃ、日々の快適さが全然違うよね?