116.俺、飲みすぎる
(ヘイ本体、最初の着水ポイントに戻ったぞ。ここからなら水上に出られるんじゃないか?)
ほう、そうか。
だったら、ダメ元でやってみますか。
試しに上昇してみたら、マジで水面に出られました。
むう。
分身って、俺より記憶力とか観察力が上なんじゃね?
兄より優れた弟は存在するけど、本体より優れた分身ってどうなのよ?
あ、元ネタにした横シューだと分身は無敵だった…。
(いや、俺はリソースを集中して壁を見てただけだぞ?)
えっ? そうなの?
あー、でも、なんとなく納得した。
俺、レトロな3DRPG――画面がワイヤーフレームとか単色のパネルのやつ――はマップ書かずにクリアしてたもん。
完全に集中してたら、できちゃうかもだな。
それじゃ、脱出方法もわかったことだし、もう一度水中にGOだ。
さっきはあちこち動き回ったから、今度は落ちるというか沈み続けてみよう。
確率は高くないけど、裏の裏をかいたワープトラップなら、それで目的地に行けるからね。
☆
素直に沈んだら3回ワープして湖底らしきところに着いた件。
マジで一本道推奨でしたよorz。
で、その湖底なんだが、水がないんだよ。
見えないドーム内の空間には空気があって、足元は石畳で、広場になってて噴水とか神殿っぽい建物もある。
海皇の海底神殿の湖版とでもいえばいいかな? そんな感じだ。あ、柱は無いです。
何なんですかね、ここ?
ま、考えても無駄だ。
とりあえず神殿に行ってみるか。
偉い神様がいると失礼にあたるので、俺はSDGを降りた。
「おじゃましまーす」
「「ようこそ、水の精霊殿へ」」
おおっと。
無人だと思ってたら、水の身体の女性が二人、俺を迎えてくれた。
一瞬だけど、銀河鉄道のウェイトレスの人? と思ったのは内緒だ。
そして、ここは水の精霊殿らしい。
てことは、ウンディーネがここに?
「「こちらへどうぞ。ウンディーネ様がお待ちです」」
俺は二人に案内され、奥へと進む。
やがて見えてきたのは、超高密度に圧縮された巨大な水球と、水星の美少女戦士を連想させる少女の姿。
どうやら、全力で何かを水に閉じ込めてるっぽい。
で、他に人はいないので、彼女がウンディーネってことか。水野精霊には違いないけど、なんだかなぁー。
「何してたのよダールくん、遅かったじゃない」
えーっと、文字にすると美少女戦士なんですが、実際の声は永遠の17歳な邪神ハンター(バイト)っぽいんですけど…。
せめて紫の人ぐらいで…。
「ダールくん、今、物凄~く失礼なこと考えたでしょ?」
背後に神の力を宿したフォークが見えた。
なぜウンディーネがフォーク? などと考えている場合じゃない!
俺、全力で否定する。
うん。こーゆーのは姿勢が大事なんだ。
「まあいいわ。上から言われたの。水球ごと中の物を食べちゃって」
「?」
事情はサッパリ分からないけど、天上界からの指示なら否も応もない。
俺は暴食を使った。
「!!?」
ウンディーネさん、どれだけの水を圧縮してたんですか!
ものすごい重さがかかったんですけど?
フェニックスの倍を軽く超えてましたよ、ええ。




