115.俺、SFも好きです
(ヘイ本体、気を付けろ。赤いバラから猛毒の花粉が出てる)
降下を開始した俺に、分身から忠告が来た。
むう。赤いバラ、ただの野薔薇じゃなかったのか…。
ひょっとして、魔宮な薔薇の原種とか?
俺、女神に害をなすつもりはないですよ?
ていうか、ここ、12宮じゃないし。
それはさておき、システムの一部でもある分身がわざわざ忠告するってことは、猛毒は俺にも有効ってことだ。
ここは慎重に行動しよう。
そうそう、分身二号は住処で見張り中です。
ついでにイメージトレーニングとかもやってます。ちな、今日のテーマは七大罪能力のコンボ技です。
ゲットしたものは、ありがたく使わなきゃね。
俺は探知で水中の生命反応を探った。
斧の女神やネッシーはいない模様。ついでにエ○キングもいないっぽい。
いや、いたらいたで扱いに困るんだけどね…。
(ヘイ本体、気を付けろ。この湖はSFだ)
SFというのは、青いネコ型ロボットのコンセプト。
アタリマエのように表現されてるけど、科学的には…ってヤツだよな?
それを湖に当てはめると…。
……。
…ウルトラなヒーローと怪獣が潜れるほど広くて深いのに、バトる時はくるぶしぐらいしか水に浸からない…とか?
(いや、それは他の湖も、ついでに海も同じだから)
あ、それもそうだな。
じゃあ、どこがSFなんだ?
(もう一度よーーく周りを見てみるんだ)
?
分身に言われるまま、俺は周囲を見渡した。
…不思議なところは見当たらな…いいっ!?
なんと! 風に吹かれて飛んできたバラの花びらが、着水と同時に金属板みたいに沈んでいった!
そうか、花びらやら葉っぱやらがそこかしこに落ちてるのに、湖面に何も浮かんでないのは確かに変だ。
まさか……湖水は水じゃ…ない?
これ…本当に「湖」か…?
(理解したようだな。湖自体が生命体って線は無いようだが、それ以外は何が起きても不思議じゃないぞ)
ああ。水中探査は警戒度MAXで行くよ。
☆
水中は超カオス。
SFってレベルじゃない。SFかSFだと言いたいです。
まず、湖の底が全然見えない。
水の透明度自体は高い。
360度見渡せば、必ずどこかに壁というか縁が見えるぐらいだ。さすがに反対側は無理だけどね。
なのに上下は見通せない。上はただ明るく、下はただ暗い。
壁の見え方から考えると、上下方向の無限回廊と水平面のランダムワープが組み合わさってる感じだ。
沈み続けてるのに一向に底につかないのは、それが原因だろう。
で、魚やらイカやらタコやらの形をした原色の平面が、生き物みたいに泳いでる。
うん。俺を避けて泳ぐし、俺が近付くと逃げるんだ。
こいつらには、俺を翻弄してるトラップが作動しないらしい。
一つ気になるのは、花びらがアッという間に沈んだ原因がまだわからないことだ。
というのも、花びらより比重があるはずの俺は、普通の水中と変わりなく移動できるんだ。
と言っても、上昇して水面にはたどり着けてないんだけどね…。