97.俺、暴食にストップがかかる
漆黒のレーザーは収まった。
進化は終了した模様。
根っこは新しい能力を身につけたんだろう。
自分を閉じ込めてた氷を一瞬で消し去った。
ああ。砕くでもなく融かすでもない。俺が見てる前で消しちゃったんだよ。
いったいどんな能力だ?
物を消すことができる能力といえば、俺が持ってる悪食と暴食だ。
ただ、七大罪能力の暴食は無い。
所持者は世界に一人と決まってるからね。
それと、これまでの流れ的に、7個のG細胞が七大罪能力に対応してると思われる。
だから、今のも七大罪の何かだと思うんだ。
七大罪は残り五つ。
傲慢(または高慢)、憤怒(または激情)、怠惰(または堕落)、強欲(または貪欲)、色欲(または肉欲)だ。
このうちのどれかなんて、俺には想像もつかない。
根っこも念話が使えるようだし、ダメ元で聞いてみるか。
「クックックって、パワーアップできたのが、そんなに嬉しいか?」
『フン、くだらないことを。パワーアップですって? そんなもの、私には必要なくってよ』
おおっと。「クックック」じゃハッキリしなかったけど、根っこは年配の女性キャラでした。
「ほう。自力で氷漬けを何とかできたと、そう言いたいのか?」
『当然ですわ。私から見たら、ほんの一部が凍っただけですもの。放っておいても大丈夫でしたのよ』
「じゃあ、放っておけばよかったじゃないか。正直に言えよ、パワーアップした力をありがたく使いましたって」
『愚かですわね。使えるものは、すべて使うのが当然でしてよ。ありがたがる必要は無いわ』
根っこは世界樹のもので確定。そして、セリフにも一理ある。
俺が凍らせた根っこは、ひげ根のごく一部ってところだろう。
本体へのダメージは極微小。
全部切断しても、再生に一日はかからないと思う。ていうか、再生の必要すらないかもってレベルだ。
でも、根っこの口ぶりは嫌いだ。
見下してる感が溢れてるもん。
返す言葉を考えてたら、根っこが続けてきた。
『それでは、私の気分を害した罰を受けてもらいましょう。おとなしく養分になりなさい!』
根っこたちが動き出した!
増えた!
伸びた!
太くなった!
天井と壁を覆いつくした!
おいおい、なんちゅう成長速度だよ…。
根っこの成長は続く。
空間がどんどん狭くなる。
うわっ!
地底湖の水位が下がってる!
そうか、根っこが水を吸ってるんだ…。
これは早くなんとかしないとまずいな…。
でも、どうする?
面倒だから、世界樹に暴食を使うか?
暴食を発!?
最後の一文字を前に、軽い頭痛が俺を襲う。
これは天上界からのサイン。
理由はわかんないけど、暴食は使っちゃダメらしい。
じゃあ、いったいどうしろと?