96.俺、まるで成長していない……
誰だよ、今回は簡単なお仕事で終われそうだって言ったの?
俺だよ…orz。
俺は今、敵意を持ってうごめく木の根っことバトル中だ。
そう、陽樹(イブ)だと思ってたら妖獣(ウッドド○)だったんだよ!
少し前、最深部に着いた俺は、幻の闇水晶を見つけた。
最深部は、少しかがめば大人が歩けるぐらいの高さがあり、先には地底湖が広がってた。
幻の闇水晶は、地底湖のほぼ真ん中にあった。
天井から伸びた木の根にからまれた状態で、半分水につかってたんだ。
濡れたくなかった俺は、糸を使って幻の闇水晶を取ろうとした。
周りの根っこを斬り、幻の闇水晶をからめとる。
そのつもりで放った糸は、根っこに食い込んで止まった。
うっそおぉぉん。
俺が驚いてるうちに、根っこは幻の闇水晶と同化した!
勘弁してくださいよ~。
糸は魔法じゃないですよ~。
何でパワーアップするんですかぁ~。
あ、魔法が云々じゃなくて、命がピンチだとそうなるんだった…。
根っこは一本一本が意志を持ったかのように動き出し、俺を攻撃してきた。
そして現在に至る。
木の根は世界樹のもの(推測)に相応しく、防御力と耐性が半端ない。
相対してるのは普通の根っこサイズだから、ひげ根みたいなもののはず。
それなのに、糸の斬撃で無傷。刺突を弾く。ファイヤーブレス程度じゃ焦げもしない。
うん。根っこの防御力、確実に増えてきてるね。
最初は糸で1/3ぐらいまで斬れた。
それがどんどん浅くなって、今じゃ傷もつけられない。
この短時間で防御力大幅増って、どんな能力だよ!?
…もしかして、積み技か?
だとしたら、超まずい。
もういくつ積まれたかわかんないよ。
俺は糸をあきらめ、魔法を使うことにした。
といっても、炎系には期待できない。
本体の世界樹は、隕石落下の高熱に耐えた実績がある。
現に、ファイヤーブレスは効いてない。
しかも、目の前には豊富な水もある。
いくら相手が草タイプと言っても…ねえ。
そもそも、ここは閉鎖空間みたいなものだから、派手な魔法は使いにくい。
まず、爆発系はダメ。天井が崩れるのはまずい。同じ理由で高威力の魔法は自粛推奨だ。
毒などの化学系は、地下水脈を汚染するとまずいので使えない。
となると、ちまちま凍らせるしかないかな?
「アイスブレス!」
極寒の吹雪が吹き荒れる。
根っこはすべて凍りついた。やったね。
「!?」
幻の闇水晶を包んでるコブから、漆黒のレーザーが何本もほとばしる!
…あ、やっちゃった……orz。
幻の闇水晶は、ダークネスムーン・クリスタルに進化中!
この進化はBボタンでキャンセルできない!
『クックック』
なん…だと…?
根っこが念話を飛ばしてきた!
植物が言葉を解するとは……って、カラスもしゃべってたし、今更だな。




