95.俺、アダムとイブを見る
「こ、これは…」
眼下の光景は衝撃的だった。
針葉樹林の中に、小規模なクレーターができてる。
中心を遠巻きにして焼け焦げた木々の株が残り、その外側の木々は倒れていた。
おそらく隕石の仕業だろう。
落下から日が浅いようで、土がむき出しのままだ。
そして何より驚きなのが、世界樹(仮称)だ。
クレーターの中心のすぐそばにありながら、無傷で威容を誇っている。
世界樹の陰にあった木々は難を逃れており、クレーターはパック○ンのようにも見える。
すごいな…。
世界樹で船を造れば、グランドなラインを余裕で周回できるかもしれない。
世界樹を宝の樹と呼びたい衝動にかられた。
おっと、感心してる場合じゃない。
幻の闇水晶を探さなきゃ。
世界樹の根元にあるんだったな。
SDG降下開始。
「デカいな…」
間近で見る世界樹は、とてつもなくデカかった。
スカイツリーなんて目じゃないです。
横に二つ並べたら、ブルジュ・ハリファ――ドバイの超高層ビルね――も小さく見えると思います。
これだけの大きさだから、そばに隕石が落ちても無傷でいるんだろう。
爆風に耐えたのか、超速で再生したのかはわかんないけどさ。
まじめな話、そのぐらいの能力を持ってないと、ここまで巨大に育てないと思う。
さて、この状況、クレーターを作った隕石は、幻の闇水晶だろう。
中心は世界樹のすぐそば、根元だからね。
隕石はクレーターの中心付近に埋まってるのが普通だから、掘っていけば幻の闇水晶が出てくるはずだ。
あっ! その前に、探知で幻の闇水晶の反応を確かめよう!
それを覚えておけば、この先きっと役に立つ。
探知オン! 地中をスキャン!
……。
…地中が小規模なダンジョンみたいになってる件。
しかも、入り口はクレーターの中心。ちょっとした落とし穴になってました。
これは自然現象か? それとも何者かの手が入ってるのか?
どっちでもいいや。さっさと入って幻の闇水晶を回収しよう。
そうそう、幻の闇水晶は、一番深いところで妖しいオーラを放ってます。
ただ、生命力を吸い取ったりは、してないんだよね。
アラクレが持ってたやつだけの特性というか効果だったのかな?
俺はSDGを収納し、落とし穴に落ちた。
悪意あるトラップってわけじゃなく、単に天井が塞がってただけの模様。
念のためゆっくり降りたんだけど、その必要はなかったな。
はい、覚えたての重力魔法を使ってみました。
フェニックスは、これで巨体を保持してたようです。
ダンジョンの通路は狭い。特に天井が低い。
俺は普通に動けるけど、人間はほふく前進が必須だ。スライムの身体に感謝だな。
ダンジョンの中には、木の根が所々に飛び出てる。おそらく世界樹の物だろう。
それで、だ。
その根っこは、なぜか光を放ってるんだ。
どうも、地上の光を地中に放ってるみたいなんだよね。陽の樹って呼んでいいかな?
そんなわけで、ダンジョンの中は明るい。外よりは少し暗いけどね。
俺は最深部を目指す。
魔物の類は出ない。
今回は簡単なお仕事で終われそうだ…。