92:その頃、村では
カイトとチェーが仲間の魔王を迎えにいくと村を発った翌日。
村のはずれに人型の化け物が血を流し倒れていると、村に滞在している冒険者から情報が入った。
チビネコレディ数人を連れて倒れている生物がいる所へ向かうと、情報通り化け物が体中に深い傷を負った状態で倒れていた。
確かに人の形はとっているが、顔は山羊そのもの。屈強な体からは蝙蝠の羽と太い尻尾を生やしており、まるで悪魔のような姿だった。
「この辺に住んでる野良魔物って雰囲気では無さそうですよね」
「そうだな。他の魔王の魔物か魔王そのものかってとこか」
魔王関係ならどちらにせよ敵である可能性は高い。
ならば動けない内に始末するのが得策ではあるのだが、ここで倒れていた理由や深手を負った原因等は聞き出しておきたいというのもある。
「エリー様……。この人、どうします?」
「とりあえずローレのダンジョンに運ぶ。あそこなら暴れられてもどうにでも出来るからね」
結局、人目の付かない場所で情報を聞き出し、敵になりそうならばすぐに始末するという事にした。
念のために持ってきた大斧をチビネコレディに預け、倒れている化け物を背負う。
化け物が思ったよりでかく引きずる形になったが、丁重に扱わなければいけない理由もないのでこのまま運ぶ。
◇
ローレのダンジョンの裏口。
こちらはダンジョンクリスタルがある部屋の一つ前まで直通になっている。
そんな近道が冒険者達に知られたらどうなるかは目に見えてるので、普段は誰にも見えないように地面に埋められて隠されている。
「担いだまま開けるのはちと面倒だな」
近くに化け物を下ろし、裏口が隠されている場所に立つ。
地面にうっすらと線が走っているのが目印だ。
上に立ったらしゃがんで扉を開くための言葉を呟く。
「コード:プランツェ」
すると、瞬く間に地面が消えて下へと進む階段が現れた。
再度化け物を担いで階段を下ろうとしたが、その前に化け物が這ってここから逃げようとしていた。
「う……うぅ……」
「待ちな!」
しかし、這う速度は非常に遅く、傷のせいか力も弱かったようでチビネコレディに容易く押さえられる。
「は、離せ……! 『粛清者』に……殺されちまう!」
「ちょっと落ち着けって。第一その傷じゃあ逃げるのもままならないだろ」
「そ、それは……」
化け物は今思い出したかのように傷口を押さえ、苦痛で顔を歪めた。
「とりあえずこっちに来な。ここのダンジョンの魔王なら薬草程度用意出来るだろうし」
「どうせ弱ってる俺をダンジョン内で殺して、魔力の足しにするつもりだろう? そう易々とは釣られんぞ」
「そんだけ疑えるなら大丈夫そうだな」
力無い抵抗をする化け物を捕まえて今度こそローレのダンジョンに入る。
運んでいる最中も私から離れようと動くので地面に叩き付けてもう一度気絶させてやろうかとも考えたが、ぐっと堪えてローレのいる部屋へと進んでいく。




