閑話:新鋭の冒険者パーティー
まずは俺達の近況でも語ろうか。
俺・アンヘルとイギー、そしてウイードの仲良し三人パーティーは冒険者になって日も浅いのに目まぐるしい活躍を遂げた。
新ダンジョンの発見を皮切りに魔物の大繁殖の阻止、秘宝の発見と続き、つい先日は紅い月による魔物の襲撃から街を守った功績者の一団として他の名の知れた冒険者達と共に称えられたりもしたな。
ランクで言うなら一番下のFから三つ上のCにまで上がった。
そんで今は、報酬金を使い俺達が救った街にあるステーキが旨いという店でちょっと豪華なランチ中だ。
この店、聞いた噂ではサイルマードの兵団長オーエンもお気に入りなんだとか。
実際に食べてみるととオーエンさんが気に入るのも分かる旨さを味わえた。
おまけにステーキも大きく食べごたえがある。
「なぁ、俺達はどこまで行けると思う?」
イギーが肉を頬張りながら言った。
その問いにウイードが
「Sランクまで行っちまうか?」
と、軽口を叩くように返した。
以前の俺達なら冗談だろうと笑って流してただろう。
だが今はちと違う。
雲を掴むような話であることには変わりないが、この調子がずっと続けばいつかはたどり着く道になってきている。
ただし、この道は幸運という不安定で脆い物で造られており、いつ崩れてもおかしくはない。
俺達みたいな実力のないぽっと出の若者が渡ればあっという間に破滅に落ちかねない道。
「行っちまおうぜ? 俺達ならいつかはSランクに届くさ!」
「お前もそうか。アンヘルはどうだ?」
「もちろん俺も同じ考えだ」
しかし三人共、栄光の為に危険な道を歩むつもりでいる。
二人がそうした理由は分からないが、わざわざ聞くつもりはない。野暮ってもんだ。
そうして旨いステーキを食べながら大金持ちになったらどうしたいとかここの店主のオーガが美人だとかの他愛のない雑談をしている最中。
なにやら外が騒がしくなっていた。
窓から様子を見てみれば騒ぎの理由はすぐに分かった。
「なんだありゃあ。魔物か?」
人よりも大きな蟷螂のシルエットに青く透き通ったクリスタルの体。
幻想的にも感じるその魔物は街中を堂々と歩いていた。
紅い月事件によって魔物に対して警戒心を強めている住民は不安そうに見ていたが、魔物は人を襲うでもなく探し物をするかのように時折顔を回しながらゆっくりと歩いている。
「おい、どうする?」
「放っといていいんじゃないか? 人に危害を加えてる訳でもねぇし」
「でも絶対安全な保証はないぜ?」
ひとまず様子見ということで魔物の動向を見守ることにした。
そして変化はすぐに訪れた。
魔物の進行方向から水色の髪の美形な青年が歩いてくる。
身なりからは俺達と同じ冒険者だと推測できるが、雰囲気からは底知れない物を感じた。
魔物は自分の前に現れた青年を見て、鳴いた。
『ヒュアアア!』と、凍える風のような甲高い声で。
「うるさっ!」
耳を塞ぎたくなる大音量の中、青年が一言喋っていたようだが、俺達に聞き取る事は出来なかった。
魔物は一通り叫び終えると、青年を背に乗せて跳躍。屋根の上に乗る。
そこから六枚の薄い羽を広げて、上空へと飛び立った。
街には困惑による静寂と、今の季節にはあり得ない冷気が残されていた。




