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81:いつか明ける悪夢

 二人の少年は稲妻の道を走ったり飛び移ったりして巨大亀の進行方向に回り込んだ。

 今まで何も気にしていなかった巨大亀も、流石に目の前に障害が現れるとなれば無視することはできなかったようで、大きく口を開いて口内の砲身を顕にした。

 

 「弱点はあの砲身だ!」


 勇者は剣で自分に向けられている砲身を指し示しながら呟いた。

 今にも何か撃ってきそうだが、二人は全く臆していない。

 どちらも勇者の弱点を知れるという能力を信じているからだ。

 

 「分かった。俺が道を作ろう」


 トネールは鎚を振って巨大亀の口内へと続く稲妻の道を作り上げた。

 その上を左手に剣、右手に炎を乗せた勇者が駆け抜ける。


 走っている最中の勇者に砲身から黒く濁った液体が発射される。

 それを予め飛んでくると知ってたかのように避けた。

 能力を使ってだ。

 

 勇者の能力は相手の弱点の可視化。

 それに加えてどう動けばいいのかナビゲートされるというものがある。

 相手の攻撃の掻い潜り方、距離を詰めるタイミングが全て見えている。

 この二つの能力を活かして、この世界で勇者になってからの戦闘全てに勝利してきたのだ。

 例え相手が赤竜でも魔王の中の王だろうと変わらない。


 「うおっ!?」


 勇者に避けられた黒液体は必然的に稲妻の道に落ちる。

 落ちて広がって、稲妻の道はじわじわと腐り落ちていく。

 勇者は崩落に巻き込まれる前に道を蹴って跳躍。

 跳んだ先は巨大亀の口の中。


 「……広いな」

 

 口内は広くて薄暗い。それと少しの生臭さ。

 仮にここに家を建てるとしても十分な広さがあるだろう。

 住み心地は最悪だろうけども。


 勇者はそんな事を考えながら湿った口内を進んで行き、喉にある砲身の前まで辿り着いた。

 手触りで金属質な物だと分かったら躊躇うこと無く剣に炎を纏わせ、砲身に思いっきり突き刺した。

 そしてナビゲートに従い、急いでこの場を離れる。

 

 『オォ゛、マ゛アアァ!!』

 

 剣の炎が砲身に詰まった黒い液体に引火し、爆発を起こした。

 苦しみの絶叫は辺り一帯を揺るがし、爆風と一緒に口の中の勇者を吹き飛ばす。

 

 「大丈夫か!」


 トネールが稲妻を走らせ、放物線を描いて空を飛ぶ勇者を追う。

 地面に衝突する前に稲妻でキャッチすることに成功する。


 「ははっ、死ぬかと思ったぜ」

 「貴様が死ぬのは俺に負けてからだ」

 

 二人は巨大亀の方を見つめる。

 口内で起きた爆発は連鎖的に広がって、甲羅の砲身までもを爆発させている。

 

 「汚ねぇ花火だな」


 勇者は小さく呟いた。


 爆発が収まる頃には巨大亀は体の至る所が欠け、滝のように血を流していた。

 しかし、歩む足は止まっておらず、着実に城に到達するタイムリミットは迫っていた。

 

 「後一押しって所か」

 「そうだな。もう一回道作ってくれ!」


 トネールは勇者に従うことに不満を持ちつつも、再度鎚を振るって稲妻を走らせる。力強く上下する鎚にはその不満が乗せられているようだった。


 次に勇者が狙ったのは心臓。巨大亀の腹辺りに弱点の印が見えたのだ。

 さっきトネールもそれに近い場所を狙ったが、腹甲に阻まれてダメージを通せなかった。

 だが爆発によってヒビが入り、脆くなった今ならどうだろうか。


 勇者は滴る血を浴びながら稲妻を駆けて巨大亀の真下へ。

 剣は爆発の際に消し飛んだので右手による掌底を打ち込む。

 勿論炎のおまけ付き。細く一点に集まった炎はバーナーのように巨大亀の腹甲を貫き、肉を焼き斬る。

 その状態で少し経つと巨大亀の歩みが止まり、支える力を失った巨体が落ちてくる。


 「危ねぇ。最後まで迷惑な野郎だ」


 下にあった建物を全て押し潰してから絶命。

 いくつもあった建物が地面に倒れる時間を稼いでくれたお陰もあって勇者は潰される前に脱出できた。

 

 『レン、空を見て。とっても綺麗よ』


 脱出した矢先、アリアに促されて勇者は空を見上げた。

 悪夢をもたらした紅い月が地平線に沈みかけ、城の後ろからは白く輝く太陽が顔を覗かせていた。

 

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