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75:終わらない悪夢

 炎が通った後は、焼けて炭となった魔物達がそこら中に転がっていた。

 万が一建物の中に人がいたら巻き込んでしまうかもしれないと考え、威力は抑えていたので建物への被害は少し焦げ付くだけに収まった。

 そして勇者は焼けて真っ黒になったデモンだった物を握っていた。

 風が吹くと、塵となって連れ去られていった。


 「痛ってぇ。火力を抑えててこれかよ」


 炎を放った手のひらは焦げて変色し、嫌な臭いを漂わせている。

 おまけに激痛も走る。


 『それくらいならマリアちゃんが治せるわよ』

 「それならいいんだがな」


 勇者はさっきみたいな芝居ではなく、本当に倒れそうになった。

 足に力を入れてなんとか踏ん張る。


 『……結構きつそうね。腹に穴が空いたから?』

 「毒のせいだな。気分が悪ぃ」


 勇者には既に常人ならば意識を失う程の毒を貰っていた。

 それを気分が悪いで済ませられるのは流石と言えよう。


 勇者は早く裂目の世界に戻るためにカルツィを呼ぼうとした。

 その前に向こう側が入口を作った。


 「レンさん。すぐ治療しますね」


 裂け目が開いてすぐにマリアが駆け寄って、腹に空けられた穴に手をやって治療を施していく。

 みるみる内に傷が塞がっていき、痣は残ったが、デモンと戦う前の状態にほとんど戻っていった。

 毒も浄化され、体調も良くなっていった。


 「完全に治すのは無理ですね。役立たずですいません」

 「これで十分だ。ありがとな」


 治療が終わると勇者はすぐさま置いてある剣を手にして立ち上がり、裂け目の世界に入った。

 そして迷うことなくモミジの元へ歩みを進める。


 「お前を守ってくれる魔物はもう死んだ。歯向かうのは諦めて情報を吐いてもらおうか」

 「まだ死んでないと思うけど?」

 「馬鹿言え。業炎に飲まれたのを見てただろ」


 モミジは妙に堂々とした態度をとっていた。

 勇者はそれをどうせ命乞いか時間稼ぎをしてるだけだと思い、哀れみの気持ちをも抱く。


 「生き残りたければ俺の質問に答えろ」

 「それは無理だって」

 「そうか。だったら死なねぇ程度に痛め付けてやる」


 勇者は剣を振り上げ、モミジの腕を切り落とそうとした。

 しかし、剣がモミジに触れる事は無かった。


 「私はそう簡単には死なないぞ!」


 デモンが勇者の腕に爪を刺していた。

 焼け焦げた筈の体は戦う以前の状態に戻っており、元気が有り余っている。

 逆に勇者は傷は癒えたが、さっき戦ったことによる疲れが残っていた。


 「すまない、入り口を閉じる判断が遅れてしまった!」

 

 カルツィが謝罪する。

 

 「過ぎた事は仕方ない。もう一度殺すのに手助けしてくれ」

 

 勇者は息を整え、デモンを振り払った。

 そして剣を構え、追撃を仕掛けにいく。


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